リンパ浮腫を完治させる有効な方法はありませんが、日常生活に支障ないほどに軽減する治療法はあります。リンパ浮腫の治療方針としては、できるだけ症状を改善し、良い状態に保つようにすることです。
通常、リンパ浮腫の治療は症状などに応じて「リンパ誘導マッサージ法」「弾性ストッキング圧迫法」「保存的治療」「利尿剤使用」「日常生活上の工夫」などの方法を組み合わせて用いるのが有効です。
外科手術による方法もありますが、安易に外科手術を行うべきではありません。
尚、2008年4月より、リンパ浮腫治療用の弾性ストッキングやスリーブなどが保険適用になっています。
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皮膚や皮下に網目状に存在するリンパ管をマッサージすることで、リンパ管の運動を活発にし、リンパ液の流れが不足している深部リンパ部分などに誘導します。
表在性リンパが深部のリンパ管に通じているのは、鎖骨上窩(鎖骨の上)、腋窩(わきの下)、鼠径部(腹部と脚の境目)などですから、この部分のリンパ節を刺激し、リンパを深部に誘導します。
次に、リンパでむくんだ下肢をマッサージしますが、体の中央に近い部位からはじめ、次第に手や足の末梢をマッサージします。マッサージの方向は常に中枢に向けた方向で行うのが重要です。
むくみのある手足の末端までマッサージしたら、最後に体全体のマッサージもできるだけ行います。
マッサージは長時間すればするほど効果がありますが、リンパ浮腫のある脚(下肢)を1日1回、1時間程度すればよいでしょう。
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軽症のリンパ浮腫であれば、弾性包帯や弾性ストッキングなどの圧迫包帯を使用すればリンパ浮腫を軽減できます。
やや重症のリンパ浮腫の場合には、圧迫力を空気圧で調整する特殊なストッキングを使用する方法もあります。
この場合、むくみが軽くなってきたら、起床時から就寝時までのあいだ弾性ストッキングを着用します。
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リンパ浮腫が慢性化している場合、弾性ストッキングなどでの圧迫法を行いながら、適度な運動をすることで浮腫は軽減します。
外部から圧迫した状態で筋肉の運動すると内部からのマッサージと同様な効果を生みます。
また、皮膚の壊死などの原因がいろいろな感染によることが多いので、女性が自分の顔を手入れするのと同様に、腫れた手足を常に清潔に保ち、細菌やカビによる感染症を防止します。
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利尿剤はむくみをとる効果がありますが、がんの合併症などの治療をするなどの特別な場合を除いては、浮腫に対しての利尿剤の使用はむしろ有害なので使用してはいけません。
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日常生活において、表在性のリンパ液の流れを抑制するような圧迫は避けるようにします。
具体的には、きつい下着の着用、時計バンド、窮屈な靴、患肢での血圧測定などを避け、重いものを持ったり、正座や長時間の立位もしてはいけません。
その他にも次のような点に注意して日常生活を過ごしましょう。
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衣類は柔らかい素材で、体をしめつきすぎない。
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バランスのとれた食事を摂る。
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適度な運動は必要だが過度の運動は避ける。
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汗をかいたらしっかりとふき取り肌を清潔に保つ。
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飛行機では、弾性ストッキングを着用し、体も動かす。
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仕事などでの長時間の同じ姿勢は避ける。
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乳がんなど手術した側での採血や点滴はしない。
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保存的治療法などがどうしてもうまくいかない強い症状があるごく限られた患者さんに対してのみ外科手術が行われることがあります。
しかし、確実な効果があるかどうかはっきりしません。
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