基本的な蕁麻疹の治療方針は、原因となる物質あるいは因子を特定し、それらを除去することとなります。
急性蕁麻疹では、比較的容易にそれらの原因を推定・特定できますが、一般に慢性蕁麻疹では困難な場合が多いです。
原因が特定できない場合も含めて、抗ヒスタミン剤などを用いた対症療法を行うのが普通です。
また、蕁麻疹の発生は生活習慣などとも関連することが多いので、摂取する食物などに気をつける一種の体質改善も必要です。
従って、蕁麻疹の治療は「原因療法」「対症療法」および「体質改善療法」などで行うことになります。
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アレルギー性蕁麻疹などで原因となるアレルゲン物質や誘引が分かっている場合には、それらの物質の摂取や、接触を回避します。
蕁麻疹を誘引する食物や薬物の摂取はもちろん、原因となるカビや家ダニなどのハウスダストなどとの接触も避けなければいけません。
また、精神的・肉体的ストレスもときに重大な問題となるので、ストレス回避に努めます。
疲労や睡眠不足なども自律神経を失調させ蕁麻疹の症状を悪化させる要因となるので、十分な休養と睡眠をとるように工夫することが大切です。
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通常の蕁麻疹の薬物療法では、「抗ヒスタミン薬」を使用します。症状が数週間にわたり長引くような場合には、「抗アレルギー薬」が効果があります。
また、膨疹の症状が特に重い急性蕁麻疹の場合に限っては、短期間の「副腎皮質ステロイド薬」を使用することがありますが、原則として慢性の蕁麻疹には適用しません。
抗ヒスタミン薬には、放出されたヒスタミンの働きを抑制する作用があり、抗アレルギー薬には、肥満細胞からのヒスタミンの放出そのものを抑制する作用があります。
抗ヒスタミン剤や抗アレルギー薬を使用する薬物療法では、蕁麻疹の症状を見ながら、医薬の服用頻度を減らしていくことが重要です。
最初の1~2日は、毎日服用し、次に二日に一回、三日に一回、一週間に一回という風に頻度を下げ、やがて服用を中止します。
しかし、これで根治するわけではないので、根気よく続けなくてはならないかも知れません。
治療薬には副作用があったり、人により効果が認められないこともあるので、症状に応じて薬剤の種類の変更や、数種類の併用、増減などを行います。
急性蕁麻疹の治療では、このような治療で、数週間以内でほぼ治癒することが多いですが、慢性蕁麻疹では、薬剤投与を徐々に減少させるような治療をもっとずっと長期間、時には数か月~数年も継続して、患者がそれほど苦痛を感じなくなった時点で、終了となります。
原因が、心因性の蕁麻疹では、「精神安定剤」や「抗うつ薬」などの投与を受けることもあります。
何らかの他の病気・疾患などがあり、その基礎疾患に伴い発症する蕁麻疹は、基礎疾患の治療が欠かせません。
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体質改善を目標とした蕁麻疹の治療法もあります。基本的には、体質を改善することで蕁麻疹が起こりにくい体質に改善しようとする治療です。
蕁麻疹を誘発する何らかのアレルゲン(抗原:原因物質)に対して、「特異的IgE抗体」が確定すれば、「特異的減感作療法」と行う方法もありますが、慢性蕁麻疹などでは、アレルギーらしいことが分かったとしても、アレルゲンを特定することが困難なのが普通です。
このような場合には「非特異的減感作療法」が適用され、効果を発揮することがあります。
I型アレルギーであれば、アレルゲンは不明だとしても、何らかのアレルゲンに対応したIgE抗体を介して、肥満細胞がヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質を放出しすることで、蕁麻疹が発症します。
非特異的減感作療法では、この肥満細胞の膜細胞を安定化し、化学伝達物質の脱顆粒を抑制することで、蕁麻疹の発症を抑えることができるとされています。
具体的な方法として、非特異的減感作療法では、アレルギー反応全体を抑制するような医薬である、ヒスタグロビン・ノイロトロピン・MSアンチゲン・ブロンカスマベルナなどの皮下注射を、一週間に1~2回のペースで、10~20~30週間という具合に回数と期間を定めて続けます。
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