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[ Physical Illness ]

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〔熱性けいれん〕

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この疾患の概要です

 生後半年~5歳くらいまでの乳幼児期に、急に38℃以上の発熱があり、ひきつけを起こすことを〔熱性けいれん〕と呼びます。

 突然、白目になり、体や手足が硬直してがたがた震えはじめます。

 意識がなくなることもありますが、通常は2~3分でひきつけはおさまります。



 〔熱性けいれん〕は、5歳くらいまでの7~8%くらいの乳幼児が経験します。

 〔熱性けいれん〕を経験した子供の三分の2は、一生のうちで一度だけの経験となります。残りの三分の一の子供は2回以上経験することもあります。  いずれの場合でも、6歳以降には〔熱性けいれん〕の症状は現れなくなります。

 〔熱性けいれん〕は、高熱になると引きつけを起こしやすいという体質によるもので、親や兄弟などに〔熱性けいれん〕の経験者がいると比較的発症しやすいといわれることから、一種の遺伝的要素が関与していると考えられています。



 〔熱性けいれん〕が発症しても、症状は数分以内で治まり、後遺症を残すことはありません。

繰り返し起こる場合でも、熱性けいれんから〔てんかん〕に移行する心配もありません。


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Overview
〔熱性けいれんという病気〕

 一般に生後半年~5歳位までの乳幼児が、38℃以上の発熱に伴って、全身ガタガタと震えてけいれんを起こし、一時的に意識を失うのが「熱性けいれん」です。

 熱性けいれんを起こすのは、生後半年~5歳くらいまでの乳幼児で、風邪やはしか、突発性発疹などの感染により熱が上がりかけたときに起きるのが特徴です。

 けいれん発作は一生涯で一度だけの子もいれば、二度、三度と繰り返し起こす子もいます。

 親、兄弟、姉妹、いとこなどの親族に熱性けいれんを起こしたことがあると、その子もまた熱性けいれんを起こしやすい傾向があり、熱性けいれんを起こしやすい体質などの遺伝的要素が関係しているのかも知れません。


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Symptom
〔熱性けいれんの症状〕

 けいれんとは一般的には「ひきつけ」とも呼ばれています。ひきつけの発作が起こると、突然両手を硬く握りしめ、身体は硬直し、手足をブルブル・ガタガタと震わせます。

 意識を失うか意識朦朧状態で、眼球は上方を向いたまま白目となり、呼吸が荒くなります。

 通常、熱性けいれんの発作は1~2分間位で自然に治まり、その後は何事もなかったかのようにスヤスヤと眠った状態になります。

 発作時間は長くても5分以内には治まりますが、発作には、白目を出し全身硬直してガタガタと震える典型的なパターンの他に、一時的に意識を失うだけのことや、高温時に意識が朦朧として数分間一点を見続けたり、あるいは無意識の中で、障子やフスマをガタガタと揺すっていたなどというパターンもあります。

 これらもまた、熱性けいれんのひとつと考えられます。

 熱性けいれんによるひきつけは、数分間だけの意識障害などで治まるのが普通ですが、けいれん状態が15分も続くと、脳への障害が心配ですし、もしも30分以上も続いたり、嘔吐を繰り返すようなら、脳炎や脳出血、髄膜炎など脳自体の他の疾患によるけいれんの可能性も出てきますので、直ちに主治医の診察を受けるのことが必要です。

 多くの子供では、熱性けいれんは一生涯で一度だけ経験しますが、中には二度、三度と繰り返し経験する子もいます。

 ある統計によれば、5歳以下の乳幼児のうちで熱性けいれんを経験したのは7~10%の子であり、けいれんが一回だけだった子が55%、二回以上の子が45%あったということです。

 これによると、一回目の熱性けいれんを起こすと、半数近くの子供は二度目のけいれん発作を起こす可能性があるので、次に起こったときに備えて、対処の仕方を知っておくと役にたちます。

 尚、熱性けいれんを起こすのは、5歳以下の乳幼児だけで、6歳以上の子では、滅多に起こしません。

〔けいれん時の対処〕

 先に述べたように、一度熱性けいれんを経験した5歳以下の乳幼児の中で、熱性けいれんを二回以上起こす子が半数近くいます。

 このことから、一度経験したら、再発するかも知れないので、どのように対処したらよいか知っておくと役にたちます。

 熱性けいれんを始めて起こすと、落ち着いて状態を観察すればいいのですが、母親は気が動転してどうしてよいか分からなくて困ってしまいます。

 けいれん発作は、母親が何かをして止められる性格のものでもありませんし、数分間で自然に止まりますから、それほど心配は要りません。

 大事なことは、けいれんの状態をよく観察し、どれくらいの時間続いたかなどそ記録することです。

熱性けいれん発作時の対処方法
あわてない  母親にとってはとても長く感じられるのですが、子供がひきつけを起こしている時間は現実には、数分で治まります。

 その間、あわてないようにしましょう。

 大声で名前を呼んだり、叫んだり、身体を揺すったりしてはいけません。そっとしてあげるのが大切です。

割り箸は無用  以前には、ひきつけを起こすと、舌を噛み切ってしまうという迷信があり、スプーンや割り箸を加えさせるとよいといわれたことがあるのですが、舌を噛むことはありませんので、そのようなことは全く無用です。

 それどころか、慌ててそのようなことをすると、口の中を傷つけてしまったり、指を噛まれてしまう危険性があります。

 口の中に吐き出したものがないことだけ確かめましょう。

楽な姿勢に  ひきつけを起こしたら、着ている衣類で硬直した身体が締め付けられないように、首まわりや胸元のボタンを外し、衣類をゆるめます。ピンなど危ないものは取り外します。

 また、けいれん時に食べたものを吐き出だすこともあるので、吐いたものが喉や気管に詰まらないように、乳幼児を身体ごと横に向かせます。

 もし吐いてしまったら、口や鼻のまわりを拭き取ります。

観察  もしも、食べたものを吐き出したりして喉や気管を詰まらせないような対応だけは必要ですが、それ以外にひきつけている子に特別にしてあげることはありません。

 特別な異常があって病院での治療が必要かどうかなどを確かめるために、いくつかのことを行います。

 ひきつけ以外に特別な異常がないか、次のような点に注意しましょう。

ひきつけの状態観察
〔状態観察〕

 今後のために、けいれんの様子をよく観察します。

 身体の突っ張り方や震え方が左右対称になっているかを確認します。

 左右どちらか一方だけのけいれんや、身体の一部だけのけいれんなど、何か異常が感じられるなら、至急救急車を呼びます。

〔時間測定〕

 時計を見て、ひきつけがどれくらいの時間続いたか確かめます。

 もしも、けいれんが10分以上続いても治まりそうもないには救急車を呼びます。

〔発熱確認〕

 通常、熱性けいれんでは38℃以上の発熱があるのが普通です。

 もしも、まったく熱がないのにひきつけているときは、熱性けいれんではなく、別の病気の可能性があるので、至急、救急車を呼んで病院に行きましょう。


治まったら  熱性けいれんが数分で治まると、乳幼児は何事もなかったかのようにスヤスヤと眠りのが普通です。

 けいれんが終わっても意識が戻らなかったり、身体の動きが悪いときは、救急車を呼んで病院まで連れてゆきます。

 けいれんが治まったら、顔色や目の動き、呼吸や手足の状態など、全身状態を確認します。

 再発防止のために、脇の下や足の付け根、首筋などをゆったりとさせ、冷やします。

 熱性けいれんは普通は一過性であり、自然に治まりますし後遺症の心配もありませんが、中には症状は熱性けいれんに似ていても、別の疾患の場合もあるので、初めて経験した場合は、かかりつけ医に診断してもらいましょう。

 熱性けいれんが起きたのが5歳以下の乳幼児で、高熱が出ているときに起こり、発作は10分程度で止まり、1日に2回以内、1年で5回以内であれば、良性な熱性けいれんと考えられます。

 しかし、そうではないときは、熱性けいれんではなく、てんかんや他の脳の病気の可能性もあるなど、やや心配なこともありますので、一度、かかりつけ医の診察を受けましょう。それは次のような場合です。

 ・けいれんが10分以上、特に15分以上続いたとき

 ・けいれんの様子が作用非対称、身体の一部だけのとき

 ・1日に2回以上の発作があるとき

 ・6歳以上で発作がでたとき

 ・何も熱がないのにけいれんが起こったとき


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cause
〔熱性けいれんの原因〕

 熱性けいれんの真の原因は未だ完全には分かっていません。

 現在考えられている最も有力な原因は、乳幼児などでは、脳がまだ未熟な成長段階にあるために、起こるのではないかという説です。

 脳の中では、全ての情報は一種の電気信号として流れていますが、脳にある神経細胞は常に微弱な電流を発生したり伝達したりして、運動や記憶などの重要な作業をこなしています。

 脳が発達段階にあり未熟だと、体温上昇によって脳の一部が突然強い電流を発生してしまい、その信号が筋肉に伝達され、意図しない勝手な運動を指令したり、意識をなくさせたりするのです。

 このような現象は尿幼児期には起こりやすいですが、脳が成長するに従い、高熱がでても脳内で異常電流が発生することがなくなり、6歳以上では熱性けいれんが起こらなくなるのです。

 脳の発達に関係するといっても、乳幼児での個人差は大きく、高熱がでてもけいれんを起こさない子もいれば、すぐにけいれん発作を起こす子もいます。

 このような違いがあっても、その子の成長や知能、能力に関係するわけではなく、あくまでも一過性の現象に過ぎませんので、何も心配することはありません。

 また、熱性けいれんを起こしやすい体質は、遺伝する傾向にあるとされています。

 親兄弟姉妹など、血縁関係者に熱性けいれんの経験者がいる乳幼児では、熱性けいれんを起こす可能性が高くなるのは事実です。

 なお、原因として一部のウイルス感染が関係しているという説もありますが、その説が当たっているかどうかはよく分かりません。


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Diagnosis
〔熱性けいれんの診断〕

 熱性けいれんは、5歳以下の乳幼児なら誰でも起こす可能性のあるごくありふれた病気です。

 現実に100人の乳幼児がいれば、10人近くの子が一度は経験します。

 一度起こると再発する可能性が高いので注意は必要ですが、それほど神経質になる必要もありません。

 症状が普通の熱性けいれんと思われるような、高熱があって、ごく短時間のけいれんであれば、単純性熱性けいれんであり、放置しても差し支えありませんが、初発である場合には、念のため医師に診てもらうことをお勧めします。

 一般的な熱性けいれんと異なる症状のけいれんが起こったときは、熱性けいれんとは別の病気の可能性も否定できないため、必ず受診し、医師の説明に従って、脳波検査なども受けておけば安心です。

 そのような場合に相当するのは下記のような症状などがあるときで、このような症状のうちひとつでも当てはまるときは、「複雑性熱性けいれん」と呼ばれています。

 最低限、脳波検査は必要です。

 場合によっては頭部CT検査や血液検査が必要になるかもしれません。

 また、脳波に異常が認められるときは「てんかん性熱性けいれん」が疑われますので、てんかんに準じた治療を受けることになるかもしれません。

 そのような場合でも、現在ではてんかんは特に重篤な疾患ではなく、治療により改善できますから大丈夫です。

 ・けいれん時間が10分以上、特に15分以上のとき。

 ・けいれんが治まったのに長時間意識が戻らないとき。

 ・身体の左右でけいれんの様子に違いがあったとき。

 ・24時間以内に2回以上発作を繰り返したとき。

 ・生後半年未満か、6歳以上でけいれんしたとき。

 ・血縁者にてんかんの人がいるとき。

 ・37℃の低い発熱でけいれんしたとき。

 ・1年間に5回以上けいれん発作がでたとき。

 尚、てんかんに限らず、異常な症状の出現状況により、脳炎や髄膜炎などが疑われることもあり、鑑定診断が必要になることもあります。


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treatment
〔熱性けいれんの治療〕

 熱性けいれんの発作が起こったときに処置の仕方については、既に「熱性けいれんの症状」の項でご説明した通りです。

 念のため、対処方法の項目だけ列記すれば、次のようになります。

 ・あわてない

 ・割り箸は無用

 ・楽な姿勢

 ・観察(状態観察・時間測定・発熱確認)

 ・治まったら

 一回目のけいれん発作時は、とかくあわててしまいますが、普通はそれほど心配はありません。落ち着いて対応しましょう。

 しかし、初めてのけいれん発作の場合には、医師の診断を受けておきましょう。熱性けいれん発作の治療は小児科で受けることができます。

 2回目以降のけいれん発作が心配なときは、医師から熱が高くなりそうなとき使用する「抗痙攣剤(坐薬)」を処方しておいてもらえば、けいれん発作を確実に予防できます。

 座薬にはセルシンやエスクレ坐薬などがあります。

 もしも、通常の単純熱性けいれんではなく、複雑熱性けいれんと診断されたり、他の疾患と診断された場合は、医師の指示に従って治療を行ってください。

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