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[ Physical Illness ]

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〔肥満・肥満症〕

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この疾患の概要です

 〔肥満症〕とは、正常な状態に比べて体重が異常に多い状態、あるいは体脂肪が過剰に蓄積した状態をいいます。

 より正しくは、体重が多いか少ないかではなく、過剰な体脂肪が蓄積しているかどうかで決まります。

 体重があっても筋肉質なら肥満とはいいません。



 しかし、通常は、簡易的に身長と体重とから計算される「BMI値」を用いて、肥満度を判定します。

 ここにBMI値による「肥満度判定図」を示しますので、ご自分の肥満度を判定して見て下さい。

 BMI値=18.5~25の範囲が正常域ですが、理想値はBMI値=22とされています。

 25より大きい場合が肥満症となりますが、その程度は1度~4度に分かれます。肥満4度ともなればかなり重症です。

肥満度判定図  


 尚、BMI値が18.5より低いときは「低体重」ですが、これが酷いときは、〔痩せ症〕ということになります。

 肥満の直接的原因は、体の各部に脂肪が蓄積されることで起こりますが、脂肪の蓄積する部位によって〔皮下脂肪型肥満〕と〔内蔵脂肪型肥満〕とに分けられます。

 本来、体内に蓄えられる脂肪はエネルギーの源でもあり、臓器を保護するための機能も果たしています。

 脂肪は皮下に貯えられたり、肺や肝臓、腸などがある体腔内にも貯えられます。

 皮下の脂肪は「皮下脂肪」と呼ばれ、体腔内の脂肪は「内臓脂肪」と呼ばれます。

 肥満は、糖尿病、高血圧、高脂血症などのさまざまな病気を誘引する危険因子であり、万病のもとともいわれます。

 肥満は食物の摂り過ぎや運動不足が原因で起こりますので、肥満を予防するためには、生活習慣を改善する必要があります。

 閉経後の女性で、運動量の減少に伴い筋肉量も減少し、逆に体内脂肪が増加していている女性がいます。

 このように、一見美しいプロポーションを維持しているように見えても、実は深刻な肥満症になっている女性が増えていて、〔隠れ肥満症〕と呼ばれています。

 また、最近では、小児の肥満が増加傾向にあることも問題です。

 一般的に欧米諸国では肥満の人がとても多く、アジア諸国では少ないです。しかし、食文化が欧米化した現在では、アジア人でも肥満の割合は増えてきました。


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Overview
〔肥満・肥満症という病気〕

 身体につく脂肪分には、皮下脂肪と内臓脂肪の二種類があります。

 皮下脂肪は、身体の表層部、皮膚のすぐ下の部分につく脂肪分であり、もう一方の内臓脂肪は、身体の深い部分、内臓の周辺などに蓄積する脂肪分です。

 肥満症には、脂肪分が蓄積する身体部位によって、〔皮下脂肪型肥満症〕と〔内蔵脂肪型肥満症〕とがあります。

 脂肪分は、エネルギーを蓄積するという意味では同じですが、それぞれの肥満症の型には特有な性質があります。

 どちらの脂肪分も過剰に蓄積すれば健康を害することになるのですが、様々な研究成果から、内臓脂肪型肥満症の方が、いろいろな病気との合併症を誘発しやすいことが分かっています。

 特に、高血糖症、高血圧症、脂質異常症の中のどれか二つ以上と内臓脂肪型肥満症が合併すると極めて危険な状態であることが分かっていて、これがいわゆる〔メタボリック症候群〕あるいは〔メタボリックシンドローム〕と呼ばれる状態です。

 メタボリックシンドロームの状態であるなら、直ちに治療が必要です。

肥満・肥満症の型とその特徴
皮下脂肪型肥満  〔皮下脂肪型肥満〕は、〔皮下脂肪蓄積型肥満〕とも呼ばれる肥満症で、脂肪細胞の数が増えやすい傾向があります。

 このタイプの肥満症では、皮下脂肪は増えにくく、減りにくい特徴があります。

 肥満症のタイプによって体形が変化しますが、皮下脂肪型肥満症は、女性に多いタイプで、〔洋梨型肥満症〕あるいは〔下半身型肥満症〕ともいわれ、下半身が丸くなります。

内蔵脂肪型肥満  〔内臓脂肪型肥満〕は、〔内臓脂肪蓄積型肥満〕とも呼ばれる肥満症で、ひとつひとつの細胞が大きく太る傾向があります。

 このタイプの肥満症では、内臓脂肪は増えやすく、減りやすい特徴があります。

 肥満症のタイプによって体形が変化しますが、内臓脂肪型肥満症は、男性に多いタイプで、〔リンゴ型肥満症〕あるいは〔上半身肥満症〕ともいわれ、ヒップよりもウエストが大きくなります。

 この内蔵脂肪型肥満症は、多くの生活習慣病を誘発する危険性が非常に高いとされ、とても危険です。



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Symptom
〔肥満・肥満症の症状〕

 肥満・肥満症が怖いのは、体重の増加や体形の変化だけではありません。本当に怖いのは、脂肪が増えることで多くの重大な合併症を発病しやすいからです。

 肥満が原因で発症する代表的な合併症には、高血糖症(糖尿病)、高血圧症、脂質異常などがありますが、これらに限られるものではありません。

 肥満が誘起する健康障害は、肥満を引き起こしている脂肪細胞の「質的異常」や「量的異常」などの性質によって異なります。

 肥満は、下表に示すように非常に多くの健康障害を誘起する可能性があります。

肥満細胞の性質に起因する健康障害
脂肪細胞の質的異常による肥満症での健康障害  質的異常を伴う肥満細胞による肥満症によって、糖尿病に代表される糖代謝異常や脂質代謝異常、心臓を取り巻く冠動脈系の異常、脳血管や一般血管の異常など、多くの健康障害が誘起されます。

質的異常の脂肪細胞による健康障害
糖代謝異常 ・耐糖能障害
・2型糖尿病
脂質代謝異常 ・高コレステロール血症
・低HDLコレステロール血症
・高トリグリセリド血症
血圧異常 ・高血圧症
尿酸濃度異常 ・高尿酸血症
・通風
肝臓脂肪異常 ・脂肪肝
冠動脈疾患 ・心筋梗塞
・狭心症
脳血管障害 ・脳血栓症
・脳梗塞症
・一過性脳虚血発作
・動脈硬化症

脂肪細胞の量的異常による肥満症での健康障害  質的異常を伴う肥満細胞による肥満症によって、骨や関節系への健康障害が誘起されます。

 また、睡眠時無呼吸症候群と呼ばれる睡眠異常、および女性の月経に関するさまざまな異常が発生します。

量的異常の脂肪細胞による健康障害
骨・関節異常 ・変形性膝関節症
・変形性股関節症
・変形性脊椎症
・腰痛症
睡眠障害 ・睡眠時無呼吸症候群
・Pickwick症候群
女性の月経異常 ・月経周期の乱れ
・月経量異常と月経周期の乱れ
・無月経症
・月経随伴症状の異常



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cause
〔肥満・肥満症の原因〕

 肥満・肥満症の直接的原因として、食事などでのカロリー摂取量が、基礎代謝(呼吸や安静時に消費されるエネルギー)や運動時の消費カロリーよりも定常的にオーバーしていると起こります。

 簡単にいえば、食べすぎと運動不足が主な原因となります。

 潜在的原因としては、遺伝的要因(体質)も見逃せませんが、環境因子としての生活習慣がより大きく寄与しています。


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Diagnosis
〔肥満・肥満症の診断〕

 肥満・肥満症の診断法には、「体重による肥満診断法(BMI法)」「体脂肪率による肥満診断法」および「ウエスト周囲長による判定法」などがあります。

 肥満は直感的にも分かりやすいのですが、これらの方法を組み合わせてより確かな判断ができ、極度の肥満に対しての治療が可能となります。

 ここでは、それぞれの肥満診断法についてその方法や特徴などを解説しています。

〔体重による肥満診断法BMI法〕

 標準体重より概ね20%以上体重が超過していれば、肥満といってもいいかと思われるものの、この定義ではいろいろな不確かさが残ります。

 そこで、現在、成人の体重による肥満診断には、BMI値(ボディマスインデックス)による方法が用いられています。

 「日本肥満学会基準2000年」では、BMI値による肥満の定義を次の式のように定めています。

 〔BMI値〕 = 〔現在の体重(kg)〕/〔身長(m)*身長(m)〕

 例えば、体重70kg、身長165cmの人の場合のBMI値は次のように計算して 25.7 となります。

 〔BMI値〕 = 〔70(kg)〕/〔1.65(m)*1.65(m)〕 = 25.7

BMIによる肥満の定義
肥満度 BMI 備考
低体重 17.9以下 やせ気味
正常 18.5以上~25未満 この範囲が最も理想的
肥満1度 25以上~30未満 やせる努力が必要
肥満2度 30以上~35未満 努力以外の治療が必要かも
肥満3度 35以上~40未満 治療が必要
肥満4度 40以上 直ちに治療開始しなくては危険

 BMIでの評価は身長と体重から単純に計算できる便利さがあり、肥満の目安にはなりますが、この値だけでは筋肉質なのか脂肪過多なのか、更に皮下脂肪型肥満なのか内蔵脂肪過多肥満なのかの判定は全く出来ないという欠点があります。

 従って、このBMI値法は、普通の体形の人には有効な方法であるものの、特別な体形(骨太、足長、骨細、筋肉質)の人には必ずしも正しくはありません。

 BMI(ボディ・マス・インデックス=肥満指数)の統計的な調査結果から、BMI=22という状態が最も健康な状態であることが分かっています。

 これを用いて身長ごとの標準体重を計算すると、最も好ましい標準体重が分かります。

 その標準体重を20%以上超えると、肥満と呼ばれることになります。

最も好ましい標準体重
身長〔cm〕 標準体重〔kg〕 これより上は肥満〔kg〕
140 43.1 51.7
145 46.3 55.5
150 49.5 59.4
155 52.9 63.4
160 56.3 67.6
165 59.9 71.9
170 63.6 76.3
175 67.4 80.9
180 71.3 85.5

〔体脂肪率による診断〕

 適正な体脂肪率は、成人男性では15~19%、女性では20~25%とされています。

 基本的には、この適正体脂肪率よりも高ければ肥満ということになります。現状では、男性で25%以上 女性で30%以上は明らかな肥満と診断されます。

 体脂肪率の値は、CTやMRIなどにより体脂肪面積を測定し、その値から体脂肪率を計算する方法が最も正確です。

 しかし、この方法は設備的にも、費用的にも簡単ではないので実用性には欠ける欠点があります。

 そこで、いわゆる「体脂肪計」を用いて測定することになります。

 この方法はあくまでも簡易的な測定法となるので、必ずしも正確な値ではありませんが、肥満かどうかを判定する目安としては十分なので、よく使用されています。

 ところで、肥満症には、意外なタイプのものがあります。

 見た目にはスラッとしていて全く肥満などには見えないのに、体脂肪率を測定してみると、異常に高い値を示す肥満症です。

 このようなタイプの肥満症は、〔隠れ肥満症〕と呼ばれています。

 隠れ肥満症の人にはどんな特徴があるか整理してみると次のようになります。

 このような条件に合致している人は、一度メタボ検診などを受けた方がいいでしょう。

隠れ肥満の秘密
危険な対象群  隠れ肥満は、閉経からしばらくした、年齢層で60歳前後のポスト更年期障害の女性に頻発します。

見た目の状態  一見、美しいプロポーションを保っていて、肥満指数(BMI値)は正常範囲にあるのに、体脂肪率が高めです。

 見た目が美しくても体脂肪率が異常に高い女性の割合は、この年代の女性の半分以上もいるとの説もあります。

原因  隠れ肥満の女性では、体重は特に増えていないのに、加齢により運動量が減少して、筋肉量が減少しているのです。

 筋肉の減少分を脂肪分が補って、プロポーションや体重としては今までの状態を維持しているように見えるのです。

危険性  隠れ肥満の女性では、見た目が美しくても、相対的に脂肪比率が高くなっていて、コレステロールなどの指標数値も正常なひとより悪くなり、明らかな肥満型の人と同程度となっています。

 肝臓に過剰な脂肪分が蓄積した脂肪肝になっている女性も多々います。

どうしたいい?  更年期以降、特に体重に変化はなくても、運動量が減ったと思う女性は、隠れ肥満になっている可能性があります。

 人間ドックなどで「体組成分析」を受けて、内臓脂肪や体内脂肪、筋肉量などを正確に測ってもらうのがいいでしょう。

 更年期以降は、とにかく筋肉量を落とさないことが大切なので、短時間でも適度な運動を心がけましょう。


〔ウエスト周囲長による診断〕

 肥満症判定方法として、「ウエスト周囲長」で行う場合があります。

 ウエスト周囲長が、男女それぞれに定められた値を超えていれば、生活習慣病になりやすい肥満と判定されます。

ウエスト周囲長による肥満判定
男性の場合  男性では、85cm以上のウエスト周囲長なら肥満症
女性の場合  女性では、90cm以上のウエスト周囲長なら肥満症



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treatment
〔肥満・肥満症の治療方針〕

 肥満は、基礎代謝や運動で消費されるエネルギーよりも食品から摂取するエネルギーの方が多すぎるとき起こります。

 基本的な肥満防止の方法や治療方法は、エネルギーの摂取を減らし、運動に使用するエネルギーを増加させることとなります。

 摂取するエネルギー源としては、蛋白質、脂質、糖質、アルコールなどがあります。

 摂取するエネルギーを減らす対策としては、まずアルコールを減らすことが必要です。

 アルコールの摂取量を減らしても欠乏症は一切起こらないから安心です。アルコール好きな人には地獄かも知れませんが。

 蛋白質、糖質、脂肪はどれも必要な栄養成分なので、過剰摂取はいけませんが、摂取しないわけにはいきません。

 蛋白質は体を構成する重要な栄養素であり、体重1kgあたり毎日10gは必要です。

 脳や神経系などはブドウ糖からしかエネルギーを得られないので糖質の摂取も不可欠です。

 また、高エネルギーな脂肪も脂溶性ビタミンの吸収を高めたり、必須脂肪酸が必要なことから一定量は摂取しなければなりません。

 このようなことから、全体での摂取エネルギー量を制限した上で、まず蛋白質の必要量を確保し、脂肪は摂取する全体エネルギーの20~30%以内とします。

 そして、残りの55~60%のエネルギー相当分を糖質で摂るとバランスがよいとされています。

 また、蛋白質、糖質、脂肪の代謝を高めるためにビタミンやミネラルをしっかり摂取することも重要です。食物繊維などの成分も必要です。

 肥満になってしまったら、ダイエットが必要ですが、これは相当な決心と強い意思がないと完遂できません。ここに、ダイエットのための指針例をあげておきます。

ダイエットのための指針例
食事のカロリー制限  ・標準体重*22~25kcal に制限します。
 ・蛋白質は十分に摂取し、脂質は制限します。

食習慣の改善  ・3食きちんと食べる。
 ・ゆっくりよく噛んで食事を楽しむようにする。
 ・まとめ食い、ながら食い、やけ食い、夜食、間食は禁止する。

適度な運動  ・毎日最低30分は軽い運動をする。
 ・1分間の脈拍が120程度になるような運動がよい。
 ・散歩、軽いジョギングなどがおすすめ。

薬物療法  ・どうしてもダイエットに成功しないとき、食欲抑制剤などを使用することができるが、医師の指導が必要です。


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