〔急性膵炎〕の診断は、臨床症状・徴候、血液・尿検査、画像診断、膵逸脱酵素の上昇などを総合的に判断して行います。
〔慢性膵炎〕の画像診断は、超音波やCTスキャンなどを用いて膵臓の線維化や膵石の有無を調べます。
画像診断で異常が見つかる場合には、病態はかなり進行していることが多いとされます。
〔急性膵炎〕が疑われる場合の検査は通常、次のように実施されます。
問診し、身体診察を行う。
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急性膵炎の診断に対する血清アミラーゼの測定をします。
通常は血中アミラーゼ値の上昇を認めることで診断できますが、急性膵炎の重症度判定にはこの結果を利用しません。
急性膵炎でも劇症肝炎でも、臓器全体が破壊されてしまい、散逸酵素が上昇しないことがあるからです。
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血清アミラーゼの限界を補うための血清リパーゼの測定をします。
他疾患との鑑別が問題となる場合、血清リパーゼが血清アミラーゼを含めた他の膵酵素に比べて最も優れているからです。
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急性膵炎が疑われる場合には、胸・腹部単純X線写真を撮影します。
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急性膵炎が疑われる場合には、超音波検査を施行します。
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臨床所見や血液・尿検査、超音波検査などによって急性膵炎の確定診断ができない場合、または膵炎の成因が明らかでない場合にはCTスキャンで確認します。
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1990年に当時の厚生省が特定疾患難治性膵疾患調査研究班により「急性膵炎の診断基準」を定め、通常は今日までこの診断基準が用いられています。
この際の鑑別診断の対象は、腹痛を伴う急性腹症とされる疾患であり、〔消化管穿孔〕〔急性胆嚢炎〕〔イレウス〕〔腸間膜動脈閉塞〕や〔急性大動脈解離〕などが挙げられます。
下記3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎とする。
ただし、慢性膵炎の急性発症は急性膵炎に含める。また、手術または剖検で確認したものはその旨を付記する。
注として、膵酵素は膵特異性の高いもの(p-amylaseなど)を測定することが望ましい。
(1)上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある。
(2)血中、尿中あるいは腹水中に膵酵素の上昇がある。
(3)画像で膵に急性膵炎に伴う異常がある。
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適切な治療を施すためには、発症後48時間以内での「重症度判定」が重要となります。
膵臓の損傷や破壊の程度によっては、数日で軽快するものから、数時間内に重篤になるものまであり、発症初期の診断と治療がその後の経過に大きく影響するからです。
1998年に厚生労働省特定疾患難治性膵疾患調査研究班で作成された急性膵炎の「重症度判定基準」があります。
また、それに伴う急性膵炎のステージ分類も示します。
予後因子
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判定基準
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ポイント
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予後因子1
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・ショック
・呼吸困難
・神経症状
・重症感染症
・出血傾向
・Ht≦30%(輸液後)
・BE≦-3 mmol/L
・BUL≧40 mg/dL
・血清 Cr≧2.0 mg/d
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各2点
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予後因子2
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・Ca≦7.5mg/dL
・FBS≧200 mg/dL
・PaO2≦60 mmHg(room air)
・LDH≧700 IU/L
・総蛋白≦6.0 l/dL
・プロトロンビン時間≧15 秒
・血症板≦10万/mm3
・CTGrade IV/V
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各1点
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予後因子3
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・SIRS診断基準における陽性項目数≧3
・年齢≧70歳
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2点 1点
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ステージ番号
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症状程度
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重症度スコア
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Stage 0
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軽症急性膵炎
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Stage 1
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中等症急性膵炎
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Stage 2
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重症急性膵炎(重症度I)
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重症度スコア2~8点
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Stage 3
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重症急性膵炎(重症度II)
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重症度スコア9~14点
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Stage 4
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重症急性膵炎(最重症)
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重症度スコア15~27点 |
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