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[ Physical Illness ]

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〔脂質異常症(高脂血症)〕

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この疾患の概要です

 血液中には、「コレステロール」「中性脂肪」「リン脂質」および「遊離脂肪酸」という4種類の脂質が溶け込んでいます。

 これらの内で、コレステロールや中性脂肪(代表的なのがトリグリセリド)などの脂質が異常に増えた状態を〔脂質異常症〕、あるいは〔高脂血症〕といいます。

 〔脂質異常症〕のタイプには、どの脂質が異常に多いかで3つに分類されます。

脂質異常症のタイプ
高コレステロール血症 コレステロールのみが多いタイプ

高中性脂肪血症 中性脂肪のみが多いタイプ

高コレステロール高中性脂肪血症 両方とも多いタイプ



 血液中のコレステロールや中性脂肪の量が異常に増えても、痛くも痒くもなく、この病気特有の自覚症状は現れません。

 しかし、〔脂質異常症〕の状態を放置していると、動脈硬化が起こります。

 特に悪玉コレステロールと呼ばれる「LDLコレステロール」は、動脈壁に付着し動脈壁を硬化させてしまいます。



 また、中性脂肪が多いと、善玉コレステロールと呼ばれる「HDLコレステロール」が減少し、悪玉のLDLコレステロールを増加させます。

 動脈硬化が起こっても、すぐには自覚症状は現れません。しかし、ついには、〔心筋梗塞〕や〔狭心症〕〔脳梗塞〕などの重篤な発作を起こす原因となります。

 現在、〔脂質異常症〕の患者数は、約700万人いるとされ、ますます増加傾向にあります。


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Overview
〔脂質異常症という病気〕

 血液中の総コレステロールや中性脂肪が異常に多くなった状態を高脂血症といいます。

 高脂血症になると、動脈内壁にコレステロールを主体とした壁ができ、動脈硬化を引き起こすとともに、最後には血管が閉塞してしまい、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な病気の原因となります。

 脂質異常症には、「高コレステロール血症」「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」および「高トリグリセリド血症 (高TG血症)」という種類があります。

脂質異常症の種類
〔高コレステロール血症〕

 血液中の総コレステロール量が高いタイプの脂質異常症で、総コレステロール値が220mg/dL以上の場合をいいます。

 1997年の国民栄養調査で、日本人男性の27%、女性の33%が該当するという結果がでて注目されました。

 最近では、下記に示すLDLコレステロールの方がより重要であるとされ、総コレステロール値はあまり注目されていません。

〔高LDLコレステロール血症〕

 高LDLコレステロール血症は、血液中の「低比重リポ蛋白量(LDL)」が異常に高い状態の脂質異常症です。

 低脂肪リボ蛋白(LDLコレステロール)は、いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれる成分です。

 高LDLコレステロール血症は、具体的には血液中のLDLコレステロール値が140mg/dL以上の場合をいいます。

 LDLコレステロール値は、心血管疾患と極めて高い相関関係があり、特に重要度の高い指標です。

〔低HDLコレステロール血症〕

 低HDLコレステロール血症は、血液中の「高比重リボ蛋白(HDL)」が異常に少ない状態の脂質異常症です。高比重リボ蛋白(HDL)は、いわゆる善玉コレステロールと呼ばれる成分です。

 低HDLコレステロール血症は、具体的には血液中のHDLコレステロール値が40mg/dL未満の場合をいいます。

 1997年の国民栄養調査では、日本人男性の16%、女性の5%が該当するという結果です。

 この症状は女性には心血管疾患の大きな危険要因とされています。(この結果から、従来は「高脂血症」と呼ばれた疾患が「脂質異常症」という名称に改名されました。)

〔高トリグリセリド血症 (高TG血症)〕

 高トリグリセリド血症 (高TG血症)は、血液中に異常に多くのトリグリセリドが存在する状態の脂質異常症です。

 1997年の国民栄養調査の結果では、日本人男性の45%、女性の33%が該当する結果となっています。

 高TG血症の人は、内臓脂肪型肥満症の人に多くみられ、動脈硬化症を促進する危険があるとされています。


〔コレステロールの役割〕

 コレステロールは、本来、身体の細胞膜やホルモンを産生するための重要な役目を果たす成分です。

 コレステロールは肝臓で産生されるのですが、これを全身に送り届けるために脂肪分とともに「高比重リボ蛋白(LDL)」という物質に取り囲まれて、血流に乗って全身に送られます。

 全身の細胞では、こうして送り届けられたコレステロールを活用して細胞膜やホルモンを作るために利用します。

 一方で、活用しきれなかったコレステロールは、「低比重リボ蛋白(HDL)」という物質に取り囲まれて、血流に乗って肝臓に戻されてきます。

 こうして、健全な身体であれば、LDLコレステロールとHDLコレステロールとがバランスした状態にあります。

 このバランスが崩れてしまい、LDLが過剰になったり、HDLが不足した状態が「脂質異常症」と呼ばれるのです。

脂質異常症の発症メカニズム
〔LDLコレステロールの過剰〕

 LDLが過剰になると、コレステロールが血管壁に付着・蓄積してしまい動脈硬化を引き起こす重要な原因となります。

 LDLコレステロールが過剰にあるということは、血管壁にコレステロールが付着しやすい状態にあることを意味します。

 このようにLDLコレステロールの過剰は、動脈硬化を促進する作用をするので「悪玉コレステロール」と呼ばれています。

〔HDLコレステロールの不足〕

 HDLは、身体各部で活用されなかった余剰のコレステロールや、血管壁に蓄積したコレステロールを剥がしとり回収して肝臓に戻す役目を果たします。

 HDLコレステロールが不足している状態では、血管壁などに蓄積されたコレステロールをうまく剥がし取れていないことを意味するので、動脈硬化を促進することになります。

 HDLが少ないということは血管壁にコレステロールが付着しやすい状態を意味します。

 このようにHDLコレステロールは動脈硬化を防止するために重要な役目を果たしているので「善玉コレステロール」と呼ばれるのです。



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Symptom
〔脂質異常症の症状〕

 脂質異常があると、血管壁に徐々にコレステロールが蓄積されてゆき動脈硬化症を促進します。

 動脈硬化症になると血液の流れが悪くなり心臓や血管の障害を招くようになってしまいます。

 初期段階の動脈硬化症の自覚症状はほとんどありませんが、徐々にあるいは急激に血管を詰まらせるなどの症状が起こり、最終的には極めて重篤な疾患の原因となります。

 特に、頭蓋内部での血管の詰まりは、脳の一部が死滅し機能を失う脳梗塞となります。また、心臓の冠動脈の詰りが怒れば、虚血性心疾患という重篤な病気になります。

 本ページでは詳しく述べておりませんが、「高トリグリセリド血症 (高TG血症)」になると、虚血性心疾患のリスクが大きくなるとされています。


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cause
〔脂質異常症の原因〕

 遺伝体質が脂質異常症の原因の一つですが、脂質異常症は、動物性脂肪の過食、過度の飲酒癖、運動不足などの日常の悪い生活習慣によっても引き起こされます。

 その他にも、内分泌性の他の病気(腎臓病、肝臓・胆道疾患、糖尿病、肥満など)によるものや、特に閉経後の女性など加齢によるものなどがあります。

 このように脂質異常症の根源的な原因には、次の三つがあります。

 ・遺伝的脂質異常(家族性脂質異常)
 ・悪い生活習慣による脂質異常
 ・二次性脂質異常

脂質異常の根本原因
〔遺伝的脂質異常〕

 遺伝的脂質異常は、家族性脂質異常症ともよばれるもので、LDLの代謝異常など、家族に特有な先天的・遺伝的要因で起こる脂質異常症です。

 真の原因が遺伝素質にあるため、治療は困難なことが多くなります。

遺伝的脂質異常の分類
〔I型家族性脂質異常症〕

 末梢組織が血液中を循環するリボ蛋白を受け取るための機能に遺伝的異常があり、血液中の脂肪分が末梢まで行けず血液中に増加するために起こる異常です。

〔II型家族性脂質異常症〕

 LDLを末梢細胞に取り込むための受容体が欠損したり障害を受けて血中のLDLが増加する脂質異常症です。

〔III型家族性脂質異常症〕

 末梢細胞によるリボ蛋白を識別するマーカーとなるアポ蛋白内に異常があるために起こる脂質異常症です。手掌線状黄色腫という特徴的な症状がでます。


〔悪い生活習慣による脂質異常症〕

 長年にわたつしつこい喫煙習慣や不規則・偏った食生活、運動不足などにより血中脂質値が増加した状態の脂質異常症です。

 適切な食生活や運動をすることで改善の可能性があります。

〔二次性脂質異常症〕

 二次性脂質異常症とは、何らかの原因疾患があって、それにより起こる脂質異常症のことをいいます。

 多くの疾患が原因となりますが、典型的な疾患は、甲状腺機能低下症やネフローゼ症候群、神経性食欲不振症、糖原病の一部、リポジストロフィなどがあります。

 また、閉経後や妊娠中にも血清脂質が上昇することがあります。



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Diagnosis
〔脂質異常症の診断〕

 初期段階では比較的に自覚症状がないため分かりにくいのですが、動脈硬化が進行してくると、胸痛や一時的な手足の麻痺、痺れなどの症状が現れます。

 はっきりとした自覚症状がでる段階では手遅れの感があるので、やはり定期的な健康診断によるチェックが欠かせません。

コレステロール値などが次のような数値に該当すると、医学的に高脂血症と判定され、治療が必要となります。

 ・血清総コレステロール値:220 mg/dL 以上
 ・中性脂肪値:150mg/dL 以上
 ・LDLコレステロール値:140mg/dL 以上
 ・HDLコレステロール値:40mg/dL 未満


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treatment
〔脂質異常症の治療方針〕

 脂質異常症のうち、家族性(遺伝性)原因によるものは「LDL吸着療法」という方法がありますが、他には確立した適切な治療法がなく、主に、動脈硬化を抑制する医薬を用いるなどの対象療法で治療することになります。

 二次性脂質異常症では、基本的に原因疾患の治療により改善の可能性が高くなります。

 それ以外の主に悪い生活習慣が原因の脂質異常症の治療については、「食事療法」「運動療法」および「薬物療法」で治療します。

〔食事療法〕

 総コレステロールが高すぎるときは、動物性脂肪の摂取を減らし、食物繊維を多く含む野菜や大豆、海藻などを摂取するようにすると効果があるかも知れません。

 毎日3食、バランスよい食品を取り混ぜてきちんと食べる習慣が必要です。

 中性脂肪が高すぎるときは、食事での摂取カロリーを減らすことは絶対条件で、飲酒量を減らし、適度な運動をするしかありません。

 これらの対策を実行しても、高脂血症の症状が改善できないときは、薬物療法を行うことになります。

〔運動療法〕

 運動療法は、きちんと頑張れば確実に効果のでる治療法です。体脂肪率を減少させればコレステロール値ご大きく低下させることが可能です。

 体重を数キログラム減量できればそれなりの効果がでてきます。

〔薬物療法〕

 脂質異常症の治療に用いられる医薬には「スタチン系薬剤」「フィブラート系薬剤 」および「陰イオン交換樹脂薬剤」などがあります。

 これらの医薬は「脂質降下薬」であり、中性脂肪やコレステロールを下げる効果があり、合併症の発症リスクを低下させることもできます。

 医薬による治療は、医薬を服用中は効果が持続しますが、服用を止めると元の状態に戻ることが多いとされ、飲み始めたら一生涯飲む必要があるかもしれません。

〔LDL吸着療法〕

 LDL吸着療法は、家族性脂質異常症の患者などに対して行う治療法です。血液を抜き出しLDLなどの不要成分をろ過し除去して血液を再び体内に戻す方法です。

 この療法は一時的な効果はありますが、短時間で元の状態に戻ってしまうため、2週間に1度程度の頻度で続けなくてはなりませんので、恒久的な治療とは呼べません。

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