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[ Physical Illness ]

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〔白内障〕

概要病気症状原因診断
治療予後合併症情報書籍
 
この疾患の概要です

 目の構造は非常に複雑で多くの組織が微妙なバランスの上に精細にできています。

 中でも重要なのが、水晶体や網膜などです。

 ものを見るときレンズの役をする水晶体が、灰白色や茶褐色に濁る病気を〔白内障〕といいます。



 白内障は典型的な目の病気のひとつで、以前には〔しろそこひ〕とも呼ばれていました。

 白内障になると、明るいところで眩しく感じたり、ものが霞み全体が白っぽくぼやけて見えるようになります。

 また、水晶体の中央部が濁ってくると視力が落ちてきます。

目の構造



 白内障の主な原因は加齢で、80歳以上のほとんどの人では白内障が生じるといわれています。

 以前には難しかったのですが、現在では、日帰りの手術により簡単に治療し完治することができる病気です。


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Overview
〔白内障という病気〕

 人の目は、光学系としてはカメラと同様な機能を持っていますが、カメラのレンズに相当するのが水晶体です。

 水晶体は直径9ミリ、厚さ4ミリほどの凸レンズの形をした透明な組織で膜に覆われています。水晶体の組織は、透明なたんぱく質と水分から構成されています。

 正常な水晶体は高度に透明であり光をよく透過し、同時に厚さを変化させることで、目で物を見るときにピントを合わせる大事な機能を担っています。

 このように、この水晶体は本来、光透過性の高い透明な組織ですが、加齢をはじめとするさまざまな原因により水晶体を構成するたんぱく質は変性してしまい、白色~黄色っぽく濁ってくることがあります。

 これが「白内障」と呼ばれる病気です。

 水晶体が濁ることで、光がうまく透過できなくなったり、水晶体内で光が乱反射してしまい、網膜に鮮明な像が結べなくなります。

 一種のフィルターがかかったような状態となり、視力の低下や視界のかすみ、強いまぶしさなどの症状が現れます。

 白内障の主な原因は加齢ですが、加齢以外にも先天性のものも含めて多くの原因があります。加齢では80代以降の人ではほとんど白内障を発症するといわれています。

 白内障はいったん発症してしまうと元に戻すことはできません。初期の段階では内服薬などで進行を遅らせることが可能ですが、ある程度進行してしまうと手術以外に治療の方法がなくなります。

 手術は、基本的に濁った水晶体の核部分を超音波で細かく砕き吸い出してしまい、代わりに人工レンズを挿入する方法で行われます。通常、手術は容易で日帰りでの手術が可能です。


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Symptom
〔白内障の症状〕

 白内障は、水晶体のどの部分から濁りが始まるか等により症状の現れ方と症状の進行速度は異なります。

 いずれの場合でも、白内障が相当進行してくると、視界が白濁するようになります。

白内障の典型的症状
目の状態変化

 一般に、加齢による白内障では、症状は視野の周辺部分からはじまり、徐々に中心部に向かって進行して行きます。

 このため、初期段階ではしばしば自覚的な症状が何も現れないこともあります。

 白内障の症状の進行度合いは個人差も大きく、白内障になっていることに一生涯気づかないこともあります。

 症状が進行し、自覚するような段階になってくると、水晶体が白色~黄色に濁るために光が散乱するようになり、眩しさを感じたり、明るいところでは物が見えにくくなることがあります。

 症状が進むと、強い眩しさのために、目が疲れ眼底に痛みを感じるようにもなります。

 症状が更に進行すると、一種の末期的症状として黒目中央の瞳孔領域が白くなり、視界が白濁して見えるようになります。

 ところで、通常の加齢性白内障とは異なり、アトピー性皮膚炎の患者に合併して起こる「アトピー性白内障」という特別な白内障があります。

 アトピー性白内障は、比較的若い人に発症することが多く、視野中央部分から白濁が始まることが多く進行度合いも速いとされます。

 この場合、水晶体中央部から濁りが開始されるので、比較的早期から視力異常を自覚するようになります。薬物療法では治療困難で手術が必要になることが多いです。

自覚症状

 白内障になると、目の中の水晶体が濁ることにより一般に視力が低下しますが、単に視力低下だけでなく下記のような多くの症状が現れます。

 逆にこのような症状があるようなら、白内障になっている疑いが強くなります。

1

・物が霞んで見えたりにじんで見える。

2

・眩しく感じる。

3

・暗い場所で見えやすく、明るいとむしろ見え難くなる。

4

・十分な光量がないと見にくい。

5

・目が疲れやすい。

6

・一時的に近くが見えやすくなる。

7

・裸眼視力、矯正視力ともに不安定で測定の都度変化する。

8

・メガネが合わなくなる。

9

・物が二重、三重に見えるようになる。

10

・体調により、見え方が不安定に変化する。

11

・日によっても見え方が変わる。

 加齢性白内障では、一般に水晶体の濁りは周辺部から始まるので、中心部の透明度がある間は視力の低下は起こりません。

 濁りの範囲が水晶体の中央部に広がるにつれて、眩しくなったり、目がかすむようになります。

 アトピー性白内障のような若年性白内障などで、濁りが水晶体中央部から始まると、一時的に近くが見えやすくなり、その後、目がかすむようにまります。

 白内障は、適切な治療を行わなければ、徐々にではあるが着実に進行し、最終的には失明してしまいます。相当に進行した段階では、手術以外に失明を免れることはできません。



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cause
〔白内障の原因〕

 白内障の直接的原因は、水晶体を構成している「アクアポリン0」というたんぱく質が変性しておこります。

 水晶体が白色~黄白色に濁ることにより発症しますが、何故そのようなことが起こるかという真の原因は分かっておりません。

 最も有力な説として、白内障は、たんぱく質のアクアポリン0が変性することで、水晶体の細胞同士の接着力が弱まったり、水分の通りが悪くなったりして起こるのではないかと推測されています。

 真の発症原因はともかく、白内障の発症に強く関係しているのは加齢ですが、その他にも次のような事項が白内障の誘起原因として考えられています。

白内障の誘起原因
老人性白内障

 白内障はさまざまな誘起原因で起こりますが、最も多いのは加齢による白内障であり「老人性白内障」とか「加齢性白内障」と呼ばれています。

 誰でも高齢になると水晶体に濁りが起こってきます。老人性白内障は一種の老化現象ですので、高齢になるほど多く発症します。60歳代では70%、70歳代では90%、80歳以上になるとほとんど全ての人が白内障となり、視力低下などが見られます。

先天性白内障

 白内障は、遺伝的な素質によっても発症することがあるとされます。生まれつきに水晶体に濁りのある「先天性白内障」といわれます。

 また、妊娠中の母親が風疹やトキソプラズマ、サイトメガロウイルスなどの病気に罹り、母体の体内でこれらの病気が胎児に感染して、白内障の原因となることもあるとされます。

合併白内障

 何らかの病気があり、それに合併して白内障が発症することがあります。さまざまな病気が原因となりますが、次のような病気と合併することが多いとされます。

 アトピー性皮膚炎や糖尿病などの合併症として、若い人の発症が増えていて、中でも糖尿病による白内障は年齢10年分くらい進行速度が速いといわれます。

 ・アトピー性皮膚炎
 ・糖尿病
 ・ぶどう膜炎
 ・緑内障
 ・網膜色素変性症
 ・眼内炎
 ・網膜剥離
 ・ガラクトース血症
 ・テタニー
 ・ダウン症候群
 ・Alport症候群
 ・Werner症候群
 ・筋緊張性ジストロフィー

外傷性白内障

 外傷性白内障は、目の怪我や衝撃などが引き金となり発症する白内障で、次のようなものがあります。

1

・目に物が刺さった場合

2

・雷など、目に極端に強い衝撃を受けた場合(電撃外傷)

3

・赤外線照射などの有害光線を受けた場合

4

・原爆やレントゲンなどによる放射線被曝


薬物性性白内障

 薬物の副作用として白内障が発症することもあります。注意すべき主な薬剤は次のようなものです。

 ・ステロイド剤
 ・抗精神病薬
 ・クロルプロマジン
 ・塩酸ピロカルピン(縮瞳薬)



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Diagnosis
〔白内障の診断方針〕

 白内障の検査は「散瞳検査」で行います。散瞳というのは「瞳が大きく開いた状態」を意味しています。

 通常、瞳は明るいところでは十分な光があるので小さくなり、暗いところでは光の量が不足するので大きく開きます。

 このように、瞳は目の中に入ってくる光の量を調節する機能をもっています。

 散瞳検査は、特殊な目薬を用いることで強制的に瞳を大きく広げ、非常に幅の狭い光線を使って瞳の中を詳細に調べる検査方法です。

〔白内障の診断〕

 白内障の診断は細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ検査)による散瞳検査で行われます。散瞳検査の手順は、目薬で瞳を大きく開かせる段階から、検査段階まであります。

1

・瞳を広げる目薬を点眼します。

2

・20~30分くらいで効果が現れ、瞳が広がります。

3

・瞳が広がった状態で目の内部を診察します。

 目の中の詳細な検査は、スリットランプという装置を使って行うのですが、この装置はどの眼科医にも必ず装備されている眼科検査法の基本的な検査機器です。

 開いた瞳の内部に非常に幅の狭い細い隙間から出される光線を角度を変えながら照射して、双眼立体顕微鏡で眼球全体の状態を調べます。

 スリットとは幅のせまい光線のことでこの検査法は「細隙灯顕微鏡検査」ともいわれています。

 目の内部全体を明るく照らしてしまうと、透明な水晶体の異常は見えにくいのですが、幅の狭いスリット光線を照射すると、濁りなどが鮮明に見えるようになるのです。

 水晶体などの目の組織は透明ではあってもまったく無構造というわけではないので、スリット光線を当てると組織の断面が見えるようになるのです。

 映画館の光線の中に空気中のチリが見えるような現象です。

 この検査法では眼底や水晶体の隅々まで詳細に調べることができます。散瞳検査は眼の病気を早い段階で発見するための有効な武器となります。

 しかし、白内障の進行が進み濁りが極度に達してしまうと、眼底検査が困難となり、網膜剥離や緑内障などの合併症の確認などがうまくできなくなることもありますので、異常を感じたりしたら、やはり早期の検査が必要です。

〔白内障手術に必要な検査〕

 白内障の定性的診断であれば、スリットランプでの検査で十分ですが、もしも手術が必要な場合の緻密な定量的診断には更に特殊な装置での検査が必要となります。

 先ず、スリットランプでの検査では、次のような点を確認します。

1

・白内障が発症しているかの確認

2

・眼底の様子

3

・網膜の様子

4

・視神経の様子

5

・黄斑部の様子

 白内障の検査は、単に白内障があるかどうかの検査だけではなく、眼科的な多くの検査に加えて、血液検査や血圧検査など全身的な検査を行うこともあります。

 白内障の進行度を調べるとともに、手術により挿入する眼内レンズの度数などを選定するための多くの検査を行います。目に関する主な検査は次のようになります。

白内障手術に先立つ検査内容
視力検査

角膜曲率半径測定

角膜内皮細胞検査

角膜の内皮細胞が減少がないか検査

細隙灯顕微鏡検査

スリットランプでの水晶体の濁りなどの白内障検査

眼底検査

眼底の網膜の状態を調べ、糖尿病などの合併症がないか確認

眼圧検査

眼球内圧がバランスしているかの測定

超音波検査

眼内レンズの度数を決めるための眼軸長検査

網膜電位図

網膜の光受容体の機能検査

レチノメーター

白内障がないときの潜在的視力の測定

結膜嚢培養検査

その他の検査

問診や目以外の血液検査や血圧測定など全身的検査

 尚、患者の全身状態によっては、白内障の手術自体に支障をきたすこともあるので、眼科医は患者に対して他の内科病院などでの全身状態についての精密検査を受診するよう依頼することもあります。

 もしも白内障以外の重大な病気などが合併している場合には、その病気の治療を優先すべきときもあるからです。


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treatment
〔白内障の治療方針〕

 白内障はごくごく初期の段階で発見され、未だ水晶体の濁りがほとんど進行していない段階であれば、「経過観察」や「抗白内障薬」による医薬療法があります。

 しかし、水晶体に明らかな濁りが出現した段階では、薬物療法では効果が期待できなくなり、手術が必要となります。

 白内障は、症状がある程度進んでしまうと手術以外に有効な治療法はありません。従って、症状がある程度進んだなら「手術の決心」をするときがきます。

 「現実の手術」は、局所麻酔の環境下で、濁った水晶体の核を吸い出してしまい、代わりに度数の合った人工レンズを挿入する方法で行われます。

 手術に要する時間は長くても30分くらいです。

 白内障の手術は、早期であれば比較的容易な手術となりますが、水晶体の核の混濁度が眼底検査ができないほどに進んでしまうと、網膜剥離の有無や緑内障などの合併症の確認が困難となることがあります。

 極端に進行してしまった場合、手術の難易度が極度に高くなります。白内障は、できるだけ早期に発見し、早期に手術するのがよいのです。

〔白内障の経過観察〕

 白内障は初発の段階で、視力の低下などがなく、未だ水晶体の濁りがほとんど発症していないときには、経過観察といって、点眼薬を処方されるくらいでしばらく様子を見ることもあります。

 白内障が進行してしまうと緑内障やブドウ膜炎などのもっと恐ろしい目の病気を併発することもありますから、初期の段階で経過観察といわれても、眼科医での定期的な精密検査は必要です。

〔白内障の薬物療法〕

 基本的に、白内障はいったん発症してしまうと、薬物で完全に進行を阻止することは不可能です。

 いわゆる「抗白内障薬」があり、症状の進行を完全に阻止することはできませんが、進行を遅らせる効果はあります。

 現実的に進行を遅らせることができる段階では、点眼薬や内服薬を処方され進行の阻止・予防をします。何もしないよりはマシということはできます。

 以下に眼科医で処方される抗白内障薬をご紹介しますが、これらの点眼薬や服用薬により水晶体が濁ってしまうのを遅くすることはできますが、白内障の症状を改善したり低下した視力を取り戻すことはできません。

抗白内障薬
抗白内障薬の点眼薬
ピノレキシン製剤

 キノン体で惹起される水晶体蛋白変性をピノレキシンが阻害し白内障の進行を予防するための点眼薬で次のような商品があります。

 ・カタリン
 ・カタリンK
 ・カリー
 ・カリーユニ

グルタチオン製剤

 水晶体蛋白SH基がSS結合となり、不溶性蛋白となるのを還元型グルタチオンが阻止し白内障を予防する点眼薬で次のような商品があります。

 ・タチオン
 ・ノイチオン
 ・チオグルタン
 ・グルタチオン
 ・イセチオン
 ・ピネチオン


抗白内障薬の内服薬
唾液腺ホルモン製剤

 間葉系組織の疾患用医薬で、白内障進行予防にも効果があるとされるものでパロチンという商品があります。

チオプロニン製剤

 水晶体蛋白のSH基保護作用、解毒作用、代謝酵素賦活作用がある医薬でチオラという商品があります。

アルドース還元酵素阻害剤

 水晶体へのポリオールの蓄積を阻害する医薬で、キネダックという商品があります。

八味地黄丸

 体の弱った機能を補う漢方薬で、老人のかすみ目や白内障の予防効果があるとされます。



〔白内障手術の決心〕

 白内障がある程度進行して水晶体が混濁してくると、薬物療法などで透明度を取り戻すことは不可能となります。

 また、白内障を長期に放置すれば失明する危険度が増すので、進行した白内障に対しては手術以外に視力回復する手段はありません。

 現在では白内障の手術は極めて容易で安全な手術とされていますが、それでも手術するとなるとそれなりの決心をしなくてはなりません。

 手術を受けるべきタイミングは職業上の要請や生活パターンなどで異なりますが、生活に不便を感じるようになったら出来るだけ早期に手術する方が得策です。

白内障手術のタイミング
生活に不便を感じる場合
1

・職業上などで細かい作業を行う場合

2

・夜間での運転頻度が高い場合

3

・視力が0.7以下で免許更新できない場合

4

・外ではまぶしくて物がみえずらい場合

5

・強度近視・高度遠視だがなるべく眼鏡を使いたくない場合


合併症がある場合
1

・糖尿病患者で網膜症併発の可能性がある場合

2

・中等度以上の白内障がある場合

3

・角膜内皮細胞数が少ない場合

4

・浅前房で緑内障急性発作が危惧される場合

5

・眩しさや見えにくさが強く、眼鏡でも矯正できない場合

6

・後嚢下混濁型や水晶体中心部の混濁が強く、周囲の明るさなどで視力が大きく変化する場合



〔白内障の手術の方法〕
(超音波水晶体乳化吸引術)
(水晶体嚢外摘出術)


 白内障の手術は、目の動きと痛みを止めるために局所麻酔をして行います。

 最近の麻酔技術の進歩のおかげで、リドカインなどを用いた点眼麻酔が可能となり患者の苦痛や負担が少なくなりました。

 白内障の手術は、混濁した水晶体の核を超音波で砕いて取り出す「超音波水晶体乳化吸引術」を施した後に皮質の処理を行い、温存しておいた水晶体を包んでいる水晶体嚢の中に、人工の眼内レンズを挿入するという方法で行われます。

 最近では、眼内レンズは、眼内レンズ挿入用インジェクターの技術や、眼内レンズの折りたたみ技術の進化で、切開創の幅は3ミリ以下に抑えられるようになっています。

 通常の場合であれば、手術に要する時間はわずか数分~10分~40分程度の短時間であり、いわゆる「日帰り手術」が可能です。

 しかし、白内障がかなり進行してしまい、水晶体の核が硬化している場合は、核を細かく砕いて取り出すことが出来ないために核を丸ごと取り出す「水晶体嚢外摘出術」という方法を採用せざるを得ないこともあります。

 この場合の手術切開創の幅は12ミリ程度と広くなり、手術時間はやや長くかかります。

 また、眼内レンズの挿入も難しくなることや、傷をうまく縫い合わせることなども困難となります。

 このような手術法では、どうしても水晶体の歪みが残ってしまい、手術後に乱視が強くなる傾向があります。

 白内障は治って視力はよくなっても、しばしば乱視のためのメガネが必要となります。

 通常、合併症がなければ視力はすぐに回復します。手術後1時間ほどの安静は必要ですが、その後には帰宅できます。

 手術後には炎症が起こりやすいので、傷口が完全に回復するまでの2~3か月間は、点眼治療と定期的な経過診察を受ける必要があります。

 目への細菌感染を完全に防止するために、最低3日間程度はお風呂に入っても洗髪などを控えます。

〔超音波水晶体乳化吸引術の手順〕

 では、実際の「超音波水晶体乳化吸引術」における手術の手順を順を追って見てみましょう。

超音波水晶体乳化吸引術の手順
手術前準備

 医師は手術の準備を整えます。患者は、これから手術を受けるんだと覚悟を決め、静かに待ちます。

麻酔

 目薬の「点眼麻酔」をします。多くの場合、これで痛みは感じなくなります。

 痛みをもっと確実に止めるために白目に「テノン嚢下麻酔」を注射することもあります。

黒目のへりの切り込み

 黒目のへりに3ミリほどの切れ込みを入れるのですが「強角膜切開」と「角膜切開」という二つの方法があります。

 強角膜切開は、黒目と白目の白め側から切れ目を入れます。細菌感染を防ぐ効果がある反面、手順は複雑で時間がかかり、白目から多少の出血もあります。

 角膜切開は、黒目としろめの境目か、わずかに黒目側から切れ目を入れます。

 作業が簡単で、傷口もきれいで、出血もなく、時間も早く済みます。しかし、強角膜切開より傷口が閉じにくく、細菌感染の率も高いといわれます。

前嚢切開

 水晶体の殻を丸くくり抜きます。前嚢ぜんのう鑷子せっし(ピンセット)を使う方法と、チストトーム(針)を使う方法とがあります。

水晶体分離

 水晶体の中身を、水を使って殻から分離させます。

超音波水晶体乳化吸引

 白内障手術の根幹部分です。フェイコチップと呼ばれる直径1ミリほどの筒を用いて、水晶体の濁りを砕きながら吸い取ります。

 この手術には、4種類の方法があり、どの方法で行うかは医師により異なります。

 ・ディバイド アンド コンカー
 ・フェイコ チョップ)
 ・プレチョップ
 ・一手法

水晶体内部のカス掃除

 殻にこびりついた水晶体の中身のカスを吸い取ります。

眼内レンズ挿入

 3ミリほどの切り口から、直径6ミリほどの眼内レンズ(人工レンズ)を挿入します。

 レンズは柔らかいシリコンやソフトアクリル製のもので、小さい穴から挿入するので、二つ折りにしたり、丸めて筒状にして挿入します。

創口閉鎖

 黒目のへりの切り込みを縫って閉じるのですが、傷口は3ミリほどしかないので、縫わないでそのままにし自然に閉じるのをまつこともあります。

 縫うとしても非常に細いナイロンの糸で1針だけです。結び目を工夫して抜糸をしなくて済む方法もあります。

 尚、強角膜切開法の場合は、結膜も縫って閉じます。


〔後発白内障のレーザー治療〕

 白内障手術の副作用として、手術後数か月~数年後になって、水晶体後嚢に濁りが出現する「後発白内障」が発症することがあります。

 最近の後発白内障の発症率は1~10%程度といわれています。

 後発白内障の症状は、「眩しくなる」とか「目がかすむ」などで、原因は手術時に残しておいた水晶体の後嚢が濁ってくるために起こります。

 後発白内障はレーザーを使って簡単に濁りを取ることができ、手術も入院も必要ありません。処置後には、視力はすぐに回復します。

〔白内障を避ける生活習慣〕

 白内障にならない方法があれば、それに越したことはありません。高齢化すれば誰でも白内障になるのは避けがたいもので、現実的に完全な方法などありません。

 それでも生活習慣を改善すれば、白内障になるのを多少遅らせることは可能です。

白内障になるのを遅らせる生活習慣
ビタミン類の摂取

・偏食をなくしバランスのよい食事をする。

・古い油を使った揚げ物、古い魚の干物などは食べない。

・ビタミンB・Cを豊富に含む野菜等を積極的に摂取する。

ビタミンB2

のり・レバー・納豆・鶏卵・いわしなど

ビタミンC

緑色野菜・いも・柑橘類など

ビタミンE

大豆・玄米・植物油・ごま・うなぎなど<


運動習慣

・規則正しい運動習慣で健康な体をつくる。

・喫煙などの悪い生活習慣をやめる。

日光対策

 強い陽射しに当たらない。陽射しの強い日にはサングラスを利用する。

その他

・白内障と合併する糖尿病などにならないようにする。
・点眼薬、内服薬などの薬物療法を続ける。


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合併症はありますか?
〔白内障の合併症〕

 発生比率は非常に低いですが、白内障の手術に伴う合併症として、多くの病気があります。主な合併症には次のようなものがあります。

緑内障

0.2~2.5%

後嚢破損

1%

駆逐性出血

0.5%

水晶体落下

0.1%

眼内炎

0.06%


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