[ Symptom of Prostatic Hypertrophy ]
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Typical symptoms
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前立腺肥大症による最大の問題は排尿障害で、尿が出にくくなったり、昼夜を問わない頻尿になったり、排尿後にまだ尿が残っているという残尿感があったり、我慢できずに尿漏れしてしまうなどの症状がでます。
最初の症状は、夜間におしっこが近くなることから始まり、徐々に症状が重くなります。症状の程度により「第1期」~「第3期」までに分類されています。
前立腺肥大は、肥大した前立腺組織が尿道を圧迫するために起こる病気で、がんではなく良性であり、生命の危機にはなりませんが、症状を放置すると、最終的には尿閉という尿が全くだせなくなる状態になってしまいます。
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前立腺肥大症の一般的症状
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前立腺肥大になると、主症状として排尿障害が現れ、付随するいろいろな症状も現れ障害の重さも異なりますが、多くの共通的な症状が現れます。ここでは、先ずどのような症状がでるのか示しておきます。
排尿開始遅延
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尿が出るまでにちょっと長めの時間がかかります。
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尿線細小
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尿がでるものの、尿線が細くなりチョロチョロしか出ない状態となります。
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尿線分裂
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尿がでるとき、尿が散ってしまい便器を汚してしまう状態となります。
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排尿終末時滴下
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尿の最後でピタリと止まらずに、ポタポタ出るような状態となります。
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残尿感
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排尿が終わったのに、まだ出し足りないで残っている感じがします。
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排尿頻拍
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いつも頻繁に尿意が襲ってくる状態になります。
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頻尿
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文字通り頻繁に尿意に襲われ、トイレに行く回数が非常に多くなります。
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夜間頻尿
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夜間就寝後、排尿のために何度も目覚め、トイレに行くようになります。
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尿混濁
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尿の色が黄色透明の正常な尿ではなく、何となく混濁し汚れた状態となります。
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閉尿
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この病気で最終的に出る症状で、尿がほとんど出なくなる状態です。
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第1期(膀胱刺激期)
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第1期は、いろいろな症状が出はじめる時期です。昼間のトイレ回数が増え始め、夜間にもトイレのために起きるようになります。排尿時の勢いがなく、尿量も少なくなります。また、尿が出はじめるまでに時間がかかるようになります。
・尿の出が悪くなる。
・尿線が細くなり、ちょっと変だと気づく。
・トイレ回数が増え、夜間にもトイレに起きる。
・排尿そのものはほぼ正常で、残尿感はまだ出ない。
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第2期(残尿発生期)
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第1期の症状に加えて、排尿が終わった後でも、まだ尿が残っている感じ(残尿感)が強くなります。ときには、おしっこが間に合わず、チビッてしまうことが起こります。
・排尿が困難となり、腹部に力を入れないと出ない。
・残尿があり、排尿してもスッキリしない。
・抗ヒスタミン系の風邪薬などを服用すると、急に尿がでなくなることが起こる場合がある。
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第3期(慢性尿閉期)
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尿道の圧迫がさらに進行し、第1期、第2期の症状に加えて、昼夜を問わずトイレに行く回数が非常に多くなります。ひどくなると排尿にかかる時間がとても長くなり数分もかかることがあります。また、更に悪化すると、尿がまったくでない尿閉の状態になってしまいます。この状態になると極めて危険で、緊急手術も必要となることがあります。
・排尿量が極端に減少する。
・膀胱内に300mL以上溜まっても尿がでない。
・尿失禁が起こりやすくなる。
・膀胱内圧上昇で、水腎、水尿管、腎不全に陥る危険がある。
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Typical Treatment
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前立腺肥大症であっても、日常生活に特別な不便がない場合には、特別な治療は必要ありません。しかし、頻繁にトイレに入るようになったり、頻尿のために外出が億劫になったり、夜間頻尿などの症状があるなら、治療が必要です。
前立腺肥大症の治療方法は、大きな区分としては「薬物療法」と「手術療法」とがあります。この他にも「民間療法」と呼ばれるものもあります。
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前立腺肥大症の薬物療法
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前立腺肥大症の薬物療法として使用される主な医薬は「交感神経α1遮断薬」「抗アンドロゲン剤」および「生薬・漢方薬」などです。また、注射薬もあります。
交感神経α1遮断薬
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交感神経α1遮断薬、またはα1ブロッカーは、機能的閉塞の解除に対して効力があり、第一選択薬として使われます。
交感神経α1ブロッカーは、排尿時に膀胱頚部の開大を助け、尿製をよくする効果があります。また、蓄尿時には、膀胱の過活動を抑制して、日中や夜間の頻尿を軽減させる効果があります。
商品名として「ハルナール」「アビショット」「フリバス」および「エブランチル」などがあります。
α1ブロッカーは高血圧治療用として使用され血圧を低下させる作用もあります。そのため、α1ブロッカーには、副作用として、めまい、ふらつき、立ちくらみなどの低血圧症状が現れることがあります。
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抗アンドロゲン剤
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抗アンドロゲン剤は、前立腺を縮小させ、腺腫による直接的な機械的閉塞を改善させる効力があります。
商品名としては「プロスタール錠25・L錠」および「パーセリン錠25」などがあります。
抗アンドロゲン剤には、肝機能障害、性機能障害や女性化乳房などの副作用があります。
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生薬・漢方薬
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頻尿や尿意切迫、切迫性尿失禁などの不安定膀胱に伴う刺激症状の治療には、生薬や漢方薬、植物エキスなどが使用されます。これらがどのように作用して排尿障害の改善ができるのかの解明はされておりません。
商品名には「エビプロスタット」および「セルニルトン」などがあります。
副作用として、軽度の消化器症状があるともいわれます。
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前立腺肥大症の手術療法
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前立腺肥大症の手術療法には「経尿道的前立腺切除術」「レーザー照射術」「温熱療法」「尿道バルーン拡張法」および「」「開腹手術」などがあります。
経尿道的前立腺切除術(TURP)
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経尿道的前立腺切除術(TURP)法は、前立腺肥大症の標準的な手術法で、先端に電気メスを装着した内視鏡を尿道から挿入し、患部を観察しながら肥大した前立腺の結節を切除し尿道内から削り取ります。尿路の閉塞が解除され、排尿困難が改善されます。
腹部を開くことなく手術ができることや、出血も少なく、痛みも無く、傷跡も残らないなどの利点があるのですが、技術的には難しい手術となるので医師が技術を習得するのに時間がかかります。
また、TURP反応と呼ばれる副作用として、体内に入った灌流液による電解質バランスの乱れで、吐き気や血圧の低下などを起こすことがあります。
手術およびその後の治療で、二週間程度の入院が必要です。切除した前立腺を調べることで、前立腺がんの有無を早期発見できます。
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前立腺レーザー照射術(VLAP)
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尿道から内視鏡を挿入し、内視鏡を観察しながらレーザー光線の照射により、肥大している結節を焼灼・蒸散し、縮小させます。
この方法は、出血や手術による侵襲が少なく、高齢者をはじめ、心臓病や脳卒中などの合併症のある人でも安心して受けられます。
レーザー光線で肥大結節を焼いてしまうために、組織を採取することができないため、前立腺がんの有無を調べることができない欠点があります。
入院期間は、切除法に比べて短くなりますが、組織が壊死して脱落するまでは、症状の改善はみられません。
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温熱療法
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温熱療法は、尿道や直腸からカテーテルを挿入し、前立腺に高周波やマイクロ波を当てて加熱し肥大を小さくすることで、尿道を広げる方法です。
根治的療法ではなく、6月~1年くらいでもとの症状に戻ってしまう欠点があります。
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尿道バルーン拡張法
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尿道バルーン拡張法は、結節肥大した前立腺により圧迫され狭くなっている尿道に尿道バルーンを挿入して、物理的に尿道を押し広げ、尿道ステントと呼ばれる管を挿入して尿道を確保する方法です。
何らかの理由で本来の手術療法ができない患者向けに行われる救急的対処療法ですが、確実な効果はあります。
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開腹手術
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特別な場合には、開腹しての手術を行うこともありますが、開腹手術は患者に大きな負担をかける上、入院期間も長くなります。
最近では、内視鏡手術が一般的になりつつあり、開腹手術は特別な場合を除いては行いません。
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前立腺肥大症の民間療法
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前立腺肥大症の改善方法として、漢方薬の使用や民間療法と呼ばれるものがありますが、必ずしも医学的な根拠が明確ではありません。
薬物療法や手術療法によらないで、民間療法を行おうとする場合には、医師にご相談することをお勧めします。
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治療上の注意点
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前立腺肥大症になり、治療を開始したら、次のような点に注意する必要があります。
・前立腺肥大症の治療薬以外の医薬のうち、利尿剤や抗コリン剤、抗うつ剤、抗ヒスタミン剤などの服用は、急な尿閉などの症状を引き起こすことがあるので、医師にその旨を伝えておき、医薬の服用について適切な指導を受けてください。
・とかく、夜間頻尿が心配になり、夜間の水分を控え気味になりますが、あまり水分摂取を抑えてしまうと、脱水症状となり、最悪時には腎機能障害を招くこともあるので、ある程度の水分の摂取はしなくてはなりません。
・手術後は手術部を圧迫するような運動は控え、安静にすることは勿論ですが、水分をこまめに摂取し、排尿することが大切です。
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