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    治療方針
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 胃腸炎の段階では、脱水状態となるのを回避するため、十分な水分補給をします。下痢止めは菌や毒素の体外排泄を遅らせるので使用しません。溶血性尿毒症症候群(HUS)になった場合、2週間ほど入院しての治療が必要となります。強度の貧血があるなら体液管理として輸液や人工透析が必要になります。
  
 HUSの治療には「支持療法」と「特異的治療法」とがありますが、HUSの治療法の基本は支持療法です。ここに、日本小児腎臓病学会の提唱する治療のガイドラインを
「支持療法」と「特異的治療法」とに分けて示します。
  
     
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    支持療法
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       体液管理 
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 体液管理法としては、輸液と透析とがあり、それぞれは次のようになっています。
  
       
      
      
      
      
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         輸液 
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 ・水、電解質の管理を厳重に行う。
  
 ・乏尿・無尿期には強い脱水は少なく、むしろ過剰輸液による溢水(容量負荷)、高血圧、低ナトリウム血症に注意する。
  
 ・高カリウム血症の場合と低カリウム血症の場合がある. 低カリウム血症に対してはカリウムの補充を行う。
  
 ・低蛋白血症に対してアルブミン製剤の投与を行う場合には溢水に注意する。
           
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         透析 
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 ・絶対的適応 
  ・乏尿(10 ml / m2 /時間以下)、無尿のある時 
  ・他の方法でコントロールできない溢水、高血圧、電解質異常、アシドーシス
  
 ・透析の中止時期 
  ・利尿のみられた時(あるいは利尿剤に反応する時)
  
 ・方法 
  ・施設によって慣れた方法を用いるが、一般的には次の方法が選択される。 
  ・年長児:血液透析(HD)または腹膜透析(PD) 
  ・乳幼児:腹膜透析(PD)
  
 ・透析施設への転院時期 
  ・HUSは急速に進行する可能性があることから、HUS発症後はすみやかに血液浄化療法が行なえる施設にコンサルトすること。特に、乳幼児は小児の透析が可能な施設にコンサルトすること。
  
         
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       高血圧に対する治療 
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 HUSに伴う高血圧は溢水によることが多い。
  
 フロセミド(ラシックス1~2 mg/kg/回を使用し、反応しない場合は透析を考慮する)または、カルシウム拮抗剤(透析中は血圧低下に注意する)を使用する。
  
       
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       輸血 
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 貧血の急激な進行、血小板の急激な減少に注意し、急性期には1日2回の血球算定を行う。
  
 輸血による溢水や高血圧に注意する。 赤血球輸血、Hbを 6g/dL 以上に維持するように輸血する。
  
 血小板輸血は、出血傾向のある時、外科的処置の前に行う。
  
       
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       脳症に対する治療 
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 痙攣に対しては、ジアゼパム(セルシン)、ジフェニルヒダントイン(アレビアチン)を静注し、もし無効であれば呼吸管理下にチオペンタール(ラボナール)などの麻酔薬を使用する。
  
 脳浮腫に対しては、除水、グリセオール投与(ただし、溢水状態を悪化させる可能性があるので注意して使用する)や透析を行う。(小児神経科医のコンサルトを求めることが望ましい)
  
       
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       DICに対する治療 
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 播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断基準を満たす場合は、メシル酸ナファモスタット(フサン)、メシル酸ガベキセート(FOY)、ウリナスタチン(ミラクリッド)、アンチトロンビンⅢ製剤などを使用する。
  
       
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       中心静脈栄養 
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 1週間以上絶食の場合には考慮する。
  
       
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    特異的治療法
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       特異的治療法 
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 以下の治療法は試験段階のもので、「腸管出血性大腸菌による HUS」に対しての有効性は現時点では確立されていない。
       
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       血漿交換療法 
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 HUSの進展(腎機能障害など)の阻止に対する有効性は認められない。中枢神経症状・急性脳症に対する効果は、現在のところ不明である。血漿交換療法を行う場合は、溢水状態の悪化を防ぐために透析の併用を行うのが望ましい。
       
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       γ-ブログリン製剤 
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 HUSの進展(腎機能障害、血小板減少など)の阻止効果は認められない。
       
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       抗生剤 
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 HUSを発症している時期では一般的には使用しない。
       
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       抗血小板剤、プロスタグランデインI2(PGI2)、血漿輸注、ビタミンE、ハプトグロビン 
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 腸管出血性大腸菌によるHUSでの有効性は証明されていない。
       
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    経過観察の指標
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       尿検査および腎機能検査 
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 尿蛋白、尿β2MG、クレアチニン・クリアランス、血圧、(DMSAシンチ)
  
       
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       腎生検 
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 腎生検の適応や時期などについては、次のようになっています。
  
       
      
      
      
      
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         適応 
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 ・長期に無尿の持続していた例
  
 ・回復期においても中等度以上の蛋白尿や腎機能低下、あるいは高血圧の持続する例
  
         
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         時期 
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 ・回復期に施行
  
         
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         予後判定の指標 
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 ・硬化糸球体、血管病変、腎皮質壊死の有無と程度
  
         
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       神経系検査 
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 脳波、CT、MRI、(眼底所見) 
(中枢神経症状のあった例には少なくとも1回は行うのが望ましい)
  
      
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