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 クレアチニン・クリアランスは、腎臓が体内に蓄積した老廃物を、尿として排泄する能力を調べる検査です。別ないい方をすれば、この方法はクレアチニンなど身体内に蓄積した老廃物を、尿中に排出する効率を測定する検査で、腎機能の低下を早期に検出できる方法です。
  
 クレアチニン・クリアランスの値が概ね、100[ml/min]以上であれば正常です。通常、クレアチニン・クリアランスが、50[ml/min] 以下となれば、〔慢性腎不全〕と診断され、もしも10[ml/min]以下という状態であれば、人工透析による治療が必要な状態です。
  
 クレアチニン・クリアランスは、次の計算式で求められます。
  
 Ccr=(U * V)/ S * 1.73/A
  
  Ccr :クレアチニン・クリアランス[ml/min] 
  U   :尿中クレアチニン濃度[mg/dL] 
  V   :1分間尿量[ml/min]
  
  S   :血清中レアチニン濃度[mg/dL] 
  1.73:日本人の平均体表面積[m2](日本腎臓学会2001) 
  A   :対表面積[m2]
  
   ここで、体表面積A[m2]の計算式はいろいろと提案されていますが、Du Bois の式は次のようになっています。
  
   A[m2]={(体重[kg])**0.425}*{(身長)**0.725}* 0.007184
  
 クレアチニン・クリアランスの正常値の範囲は、下表のようになっていますが、通常、男女ともに、100[ml/min]以上であれば正常とされます。
  
     
    
    
    
    
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       男性 
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     97~137[ml/min]  | 
     
    
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       女性 
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     88~128[ml/min]  | 
     
     
     
    
 40歳を過ぎると、10年、年齢が上がるごとに、クレアチニン・クリアランス値は約10%低下するのですが、想定以上に低すぎるときは腎機能が低下していることを意味します。
  
 低下の度合いが、50~70[ml/min]で「軽度障害」、30~50[ml/min]で「中等度障害」、30[ml/min]以下で「高度障害」となります。高度障害の状態では、〔尿毒症〕を呈するようになり、極めて危険な状態です。
  
 クレアチニン・クリアランスが異常値を示す場合、次のような疾患・病気が考えられます。
  
     
    
    
    
    
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       低値を示す場合:高度障害 
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 クレアチニン・クリアランス値:30[ml/min]以下
  
 〔尿毒症〕の状態であり、「心臓麻痺」「腸閉塞」「昏睡」などを引き起こす極めて危険な状態です。また、重度の〔心不全〕や〔糸球体腎炎〕〔腎硬化症〕〔糖尿病性腎炎〕〔膠原病〕〔尿管閉塞〕などによる腎障害が考えられます。
  
       
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       低値を示す場合:中等度障害 
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 クレアチニン・クリアランス値:30~50[ml/min]
  
 中等度の〔心不全〕や〔糸球体腎炎〕〔腎硬化症〕〔糖尿病性腎炎〕〔膠原病〕〔尿管閉塞〕などによる腎障害が起こっているかも知れません。
  
       
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       低値を示す場合:軽度障害 
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 クレアチニン・クリアランス値:50~70[ml/min]
  
 軽度の〔心不全〕や〔糸球体腎炎〕〔腎硬化症〕〔糖尿病性腎炎〕〔膠原病〕〔尿管閉塞〕などによる腎障害が起こる可能性があります。
  
       
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       高値を示す場合 
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 〔糖尿病〕〔末端肥大症〕、妊娠などが想定されます。
  
       
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 クレアチニン・クリアランス検査は、相当な手間がかかるため、簡便に推定する方式が考案されています。このような方法は、あくまでも簡便法なので、明らかに腎機能低下が疑われる状態では、正式な方法でクレアチニン・クリアランス値を求めることが推奨されます。
  
 ここでは、コッククロフトとゴールトにより提唱された算定式を示します。コッククロフトとゴールトの計算式では、血清クレアチニン濃度と年齢、体重を用いて、値を推定します。この推定式は、18歳以上の成人用で、乳幼児や60歳以上の筋肉質の人には適用されません。また、女性では、算出結果の値を0.85倍します。
  
 Clcr = (140-Age)* Weight / 72 / Scr
  
  Clcr :クレアチニン・クリアランス[ml/min] 
  Scr  :血清中レアチニン濃度[mg/dL] 
  Weight:体重[kg] 
  Age   :年齢[-]
  
    
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