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[ Physical Illness ]* @@@ * |
〔NAGビブリオ感染症〕 |
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〔コレラ〕という重篤な病気の原因となる病原菌にコレラ菌があり、ビブリオ属に属するグラム陰性のコンマ型をした桿菌の一種です。 |
コレラ菌は好アルカリ性の細菌で主に河川や海などに生息している細菌で、200種類以上の血清型(O抗原)の存在が知られています。 ・コレラを引き起こす「O1型コレラ菌」 (当時の考えでは)コレラを引き起こさない「非O1型コレラ菌」
この「非O1型コレラ菌」のことを英語表記で「NAG:Non-agglutinable Vibrios」と呼びました。 |
既に述べたように、コレラを引き起こすコレラ病原菌は、ビブリオ属に属するグラム陰性のコンマ型をした桿菌の一種で、血清型として「O1型」と「O139型」という二つがの種類があります。 現在ではコレラ病原菌は200種類以上の血清型(O抗原)があることが知られていて、その中の「O1型」と「O139型」がヒトに感染するコレラを発病させることが分かっています。 また、この二つ以外のコレラ菌も、ヒトに感染すると、食中毒などを発症させます。 しかし、以前には「O1型」だけがコレラを発症させ、それ以外はコレラの原因にはならないと考えられていたため、コレラを引き起こす「O1型」と、(当時の考えでは)コレラの原因にはならない「非O1型(Non-agglutionable Vibrios)」とに分類され、この非O1型が「NAGビブリオ菌」と呼ばれるようになりました。 現在では「O139型」の菌もコレラを発症させることが分かっているので、混乱や矛盾があるのですが、現在でも「NAGビブリオ菌」という言葉が使われています。 現在の解釈では、O1型とO139型以外のコレラ菌による感染症(食中毒)が「NAGビブリオ感染症」あるいは「ナグビブリオ感染症」ということになります。 NAGビブリオ菌は、海水より塩分濃度の低い下水や河川水が流入する沿岸水域で生息し、水温の高い時期に菌数が増加します。 日本では、NAGによる食中毒の集団発生はそれほど多くは起こりませんが、過去にスーダンでは井戸水が原因で600人以上がコレラ様患者が発症した例などがあります。 これらの集団発生や散発的な下痢症発生は、魚貝類の生食や、衛生状態の悪い地域での飲料水汚染が感染原因となっています。 近年インドやペルーで、コレラ菌とは異なる新規の下痢毒素を産生しコレラ様下痢症の集団発生などを引き起こすものとして、次の非01・非O139型菌の情報が報告されています。
・O10型
尚、O1型、O139型菌の中でも毒素を産生しないものもありますが、これらは食中毒の原因にはなります。 |
NAGに汚染された水や食物を経口摂取すると、摂取後、数時間~72時間以内に腹部不快感から始まる、いわゆる「食中毒」を発症します。 典型的な悪心、腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れます。 下痢の程度は完全な水様性のものから、軟便程度のものまでいろいろですが、ひどい場合は血便になることもあります。 ときに、38度C台の発熱をみることもあります。 NAGの経口摂取以外でも、傷口の化膿やその他の病気のために免疫力が低下している状態では、腸管外感染症が発症し重篤な菌血症や敗血症になる危険性があります。 |
NAGビブリオ菌は、一端一毛性のグラム陰性、中等大桿菌で、菌体はやや湾曲した菌です。 通常の食中毒の原因となる腸炎ビブリオとは異なり、食塩の存在しない環境でも発育できる菌であり、沿岸海水のみならず、日常生活排水が流入する下水や河川、汚泥内に存在します。 熱や乾燥、酸には弱いものの、好適な温度条件では、食品中で増殖し、食品の保存状態が悪ければ、しばしば食中毒の原因となります。 |
食中毒が発生した場合、原因がNAGビブリオ感染症かどうかを判定するには、患者からの下痢糞便の検査と、汚染源と想定される食べ残した食品、調理場のふき取り資料などの検査を行います。 検査方法は、「O1型」「O139型」コレラ菌の場合と同様な方法が使われます。 NAGはTCBS平板上では、直径2mm程度で平坦な白糖分解性の黄色集落を示しますが、O1型やO139型コレラ菌と区別できません。 このため、直接診断用血清によって凝集反応を行い、コレラ菌ではないことを確認します。
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NAGビブリオ感染症による食中毒の治療は、対症療法のみで行われ、1週間程度で軽快します。 高い発熱があったり、何らかの基礎疾患がある場合には、テトラサイクリンやニューキノロンなどの抗菌薬投与を行うことで、下痢症状や排菌期間の短縮に効果があります。 脱水症状がみられるときは、電解質を含む輸液が効果を発揮します。 十分に気を遣っていれば予防対策は簡単です。 この病気が主に、生の海産物食品やその調理食品、あるいは消毒不十分な井戸水などから感染することを考えれば、予防策は、海産物などは新鮮なものを食べること、水についてはきちんとした水道水やミネラルウォーターを飲むことなどとなります。 なお、食品衛生法では、食中毒が疑われる場合は、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ることとなっています。 |