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[ Physical Illness ]

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その他の感染症
〔その他の感染症〕
サルモネラ感染症
ブドウ球菌感染症
ウエルシュ菌感染症
セレウス菌感染症
ノロウイルス感染症
カンピロバクター感染症
下痢原性大腸菌感染症
エルシニア感染症
腸炎ビブリオ感染症
NAGビブリオ感染症
サイトメガロウイルス感染症
ビブリオ・フルビアリス/ファーニシ感染症
プレジオモナス・シゲロイデス感染症
リステリア・モノサイトゲネス感染症
エロモナス・ハイドロフィラ/ソブリア感染症
アニサキス症
広東住血線虫症
住血吸虫症
旋尾線虫症
アメーバ症
シラミ症
乳児ボツリヌス症
伝染性単核症
ヒストプラスマ症
アライグマ回虫による幼虫移行症
肺炎球菌性肺炎
トリコモナス膣症
カンジダ症
ヘルペス脳炎
疥癬
先天性風疹症候群
ブドウ球菌食中毒
軟性下疳
ハンセン病

〔NAGビブリオ感染症〕

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この疾患の概要です

 〔コレラ〕という重篤な病気の原因となる病原菌にコレラ菌があり、ビブリオ属に属するグラム陰性のコンマ型をした桿菌の一種です。

 1854年にイタリア人医師フィリッポ・パチーニにより最初に発見されました。

 その後、1884年にロベルト・コッホがコレラの病原体であることを発見しました。


 コレラ菌は好アルカリ性の細菌で主に河川や海などに生息している細菌で、200種類以上の血清型(O抗原)の存在が知られています。

 それらのコレラ菌血清型の中で、現在では「O1型(オー1型)」と「O139型(オー139型)」のコレラ菌がヒトに感染してコレラを発病させることが知られています。

 また、それ以外の型の菌も食中毒などを発生させることが分っています。

 以前には、コレラ菌の中で「O1型」だけが〔コレラ〕を発症させると考えられていたために、コレラ菌は次のような二つのグループに分類されていました。

 ・コレラを引き起こす「O1型コレラ菌」

(当時の考えでは)コレラを引き起こさない「非O1型コレラ菌」

 この「非O1型コレラ菌」のことを英語表記で「NAG:Non-agglutinable Vibrios」と呼びました。

 この「非O1型」を「NAGビブリオ菌」と呼び、この菌の感染で発症する食中毒などの病気が「NAGビブリオ感染症」と呼ばれるようになりました。

 現在では「O139型」の菌もコレラを発症させることが分かっているので、矛盾があり、混乱もあるのですが、現在でも〔NAGビブリオ感染症〕という言葉が使われています。

 尚、コレラ菌のことは英語学名では「Vibro cholerae」と呼ばれています。


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Overview
〔NAGビブリオ感染症という病気〕

 既に述べたように、コレラを引き起こすコレラ病原菌は、ビブリオ属に属するグラム陰性のコンマ型をした桿菌の一種で、血清型として「O1型」と「O139型」という二つがの種類があります。

 現在ではコレラ病原菌は200種類以上の血清型(O抗原)があることが知られていて、その中の「O1型」と「O139型」がヒトに感染するコレラを発病させることが分かっています。

 また、この二つ以外のコレラ菌も、ヒトに感染すると、食中毒などを発症させます。

 しかし、以前には「O1型」だけがコレラを発症させ、それ以外はコレラの原因にはならないと考えられていたため、コレラを引き起こす「O1型」と、(当時の考えでは)コレラの原因にはならない「非O1型(Non-agglutionable Vibrios)」とに分類され、この非O1型が「NAGビブリオ菌」と呼ばれるようになりました。

 現在では「O139型」の菌もコレラを発症させることが分かっているので、混乱や矛盾があるのですが、現在でも「NAGビブリオ菌」という言葉が使われています。

 現在の解釈では、O1型とO139型以外のコレラ菌による感染症(食中毒)が「NAGビブリオ感染症」あるいは「ナグビブリオ感染症」ということになります。

 NAGビブリオ菌は、海水より塩分濃度の低い下水や河川水が流入する沿岸水域で生息し、水温の高い時期に菌数が増加します。

 日本では、NAGによる食中毒の集団発生はそれほど多くは起こりませんが、過去にスーダンでは井戸水が原因で600人以上がコレラ様患者が発症した例などがあります。

 これらの集団発生や散発的な下痢症発生は、魚貝類の生食や、衛生状態の悪い地域での飲料水汚染が感染原因となっています。

 近年インドやペルーで、コレラ菌とは異なる新規の下痢毒素を産生しコレラ様下痢症の集団発生などを引き起こすものとして、次の非01・非O139型菌の情報が報告されています。

 ・O10型
 ・O11型
 ・O12型
 ・O54型
 ・O144型

 尚、O1型、O139型菌の中でも毒素を産生しないものもありますが、これらは食中毒の原因にはなります。

 行政上は、これらの菌もNAGと同様に食中毒菌として扱われています。


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Symptom
〔NAGビブリオ感染症の症状〕

 NAGに汚染された水や食物を経口摂取すると、摂取後、数時間~72時間以内に腹部不快感から始まる、いわゆる「食中毒」を発症します。

 典型的な悪心、腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れます。

 下痢の程度は完全な水様性のものから、軟便程度のものまでいろいろですが、ひどい場合は血便になることもあります。

 ときに、38度C台の発熱をみることもあります。

 NAGの経口摂取以外でも、傷口の化膿やその他の病気のために免疫力が低下している状態では、腸管外感染症が発症し重篤な菌血症や敗血症になる危険性があります。


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cause
〔NAGビブリオ感染症の原因〕

 NAGビブリオ菌は、一端一毛性のグラム陰性、中等大桿菌で、菌体はやや湾曲した菌です。

 通常の食中毒の原因となる腸炎ビブリオとは異なり、食塩の存在しない環境でも発育できる菌であり、沿岸海水のみならず、日常生活排水が流入する下水や河川、汚泥内に存在します。

 熱や乾燥、酸には弱いものの、好適な温度条件では、食品中で増殖し、食品の保存状態が悪ければ、しばしば食中毒の原因となります。


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Diagnosis
〔NAGビブリオ感染症の診断〕

 食中毒が発生した場合、原因がNAGビブリオ感染症かどうかを判定するには、患者からの下痢糞便の検査と、汚染源と想定される食べ残した食品、調理場のふき取り資料などの検査を行います。

 検査方法は、「O1型」「O139型」コレラ菌の場合と同様な方法が使われます。

 NAGはTCBS平板上では、直径2mm程度で平坦な白糖分解性の黄色集落を示しますが、O1型やO139型コレラ菌と区別できません。

 このため、直接診断用血清によって凝集反応を行い、コレラ菌ではないことを確認します。

食中毒原因菌の調査
糞便検査  糞便は採取後直ちにTCBSなどの選択分離培地に塗抹し増菌培養する。

食品検査  食品は細砕しAPW(1%NaCl加アルカリペプトン水)で増菌後、分離培養する。

環境材料検査  水、汚泥などの濾過可能なものは濾過し、濾紙をそのままAPW増菌培養し、泥土など濾過ができないものは、APWを加え培養する。



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treatment
〔NAGビブリオ感染症の治療〕

 NAGビブリオ感染症による食中毒の治療は、対症療法のみで行われ、1週間程度で軽快します。

 高い発熱があったり、何らかの基礎疾患がある場合には、テトラサイクリンやニューキノロンなどの抗菌薬投与を行うことで、下痢症状や排菌期間の短縮に効果があります。

 脱水症状がみられるときは、電解質を含む輸液が効果を発揮します。

 十分に気を遣っていれば予防対策は簡単です。

 この病気が主に、生の海産物食品やその調理食品、あるいは消毒不十分な井戸水などから感染することを考えれば、予防策は、海産物などは新鮮なものを食べること、水についてはきちんとした水道水やミネラルウォーターを飲むことなどとなります。

 なお、食品衛生法では、食中毒が疑われる場合は、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ることとなっています。

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