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〔サイトメガロウイルス感染症〕

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この疾患の概要です

 〔サイトメガロウイルス感染症〕は、サイトメガロウイルス(CMV)の初感染、再感染あるいは再活性化によって起こる感染症の病気です。

 この病気の病原体であるサイトメガロウイルスは、ヘルペスウイルス科ヘルペスウイルス亜科に属するウイルスの一つです。

 多くの日本人では、周産期に母子間でサイトメガロウイルスに初感染したり、幼小児期に不顕性感染の形で初感染します。


 CMVの感染経路は、ヒトとヒトの直接的・間接的な接触で起こりますが、それを媒介するのは、母乳、血液、尿、唾液、鼻汁、涙、子宮頚管粘液、膣分泌液、精液などです。

 サイトメガロウイルスに感染すると、生涯にわたってそのウイルスの宿主として潜伏感染した状態となり、ウイルスは体内に存在し続けます。

 将来、高齢化など何らかの原因により免疫力が低下した状態になると、潜伏感染していたCMVが再活性化すると、〔サイトメガロウイルス感染症〕の症状を発症するようになります。

 幼小児や成人がCMVに初感染し発症する場合には、発熱、肝臓やリンパ節の腫れなどの症状が現れますが、ほとんどの場合、症状は軽度です。

 将来、免疫力が低下し潜伏感染していたウイルスが再活性化して発症する場合には、発熱、白血球減少、血小板減少、肝炎、関節炎、大腸炎、網膜炎、間質性肺炎などの症状が現れることがあり、重症化することもあります。

サイトメガロウイルス感染症の症状
先天性感染症  妊婦が妊娠初期にサイトメガロウイルスに初感染すると、ウイルスが胎盤を経由して胎児にも移行感染します。

 〔TORCH症候群(巨細胞封入体症)〕と呼ばれる〔先天性感染症〕の原因となることがあります。

 多くは無症状ですが、軽症や重症まで幅広い症状が起こります。

 典型的には低出生体重、黄疸、出血斑、肝脾腫、小頭症、水頭症、脳内石灰化、肝機能異常、血小板減少、難聴、脈絡網膜炎、DICなどの症状が出現します。

 後になって難聴や神経学的後遺症、知能障害、眼の異常などを発症することもあります。

新生児・乳児期感染症  出産時の産道感染、母乳からの感染、尿や唾液を介した水平感染で感染しますが、ほとんどは不顕性感染か軽度の感染で経過します。

 早産児や低出産体重児では、母親から十分な抗体の移行を受ける前に出生しているため、肝機能異常、間質性肺炎、単核症など重篤な症状を呈することもあります。

健常人での感染症  思春期以降に初感染したり、外科手術などで大量輸血を受けてCMVに初感染したり、あるいは何らかの原因で潜伏感染していたCMVが再活性化した場合などでは、発熱、肝機能異常、間質性肺炎、異型リンパ球増多など伝染性単核症様の症状が出現し、この場合には、症状は重症化しやすいとされます。

移植患者での感染症  臓器移植では、ドナー、レシピエントのどちらがウイルス感染している場合でも、移植による拒絶反応防止のために免疫抑制剤を投与するため、CMVが再活性化し感染症を発症する危険性が大となります。

 発熱、間質性肺炎、腸炎、肝炎、網膜炎、脳炎を発症したり、最悪の場合、移植臓器をを失うことにも繋がります。

HIV感染者での感染症  白血球の種類のひとつで細菌やウイルスを攻撃する司令官として免疫全体に重要な働きをしているCD4陽性リンパ球の数は、健常者では700~1500個/mm3 ほどあります。

 HIV感染者(エイズ患者)では、このCD4が減少しますが、この個数が500個/mm3 以下になると、CMVを含めての日和見感染を発症するリスクが高くなるとされています。

 特に50個/mm3 以下となると、重症度も高くなります。すべての臓器にウイルスが感染しやすくなり、網膜炎、腸炎、脳炎を発症することが多くなります。

 最近、日本におけるCMV抗体保有者数は減少傾向にあり、妊娠可能年齢の女性では70%程度となっています。

 このことは、乳幼児期に初感染せずに成人したことを意味していて好ましいことではあります。

 しかし、一方でこの女性が妊娠初期に初感染を受けると、先天性CMV感染症患児を出産する頻度を高めます。

 尚、この病気の病原体であるサイトメガロウイルスは英語では(CMV:Cytomegalovirus)と表記します。

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