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〔アライグマ回虫による幼虫移行症〕

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この疾患の概要です

 アライグマ回虫による〔幼虫移行症〕は、アライグマ回虫の感染により引き起こされる感染症です。

 この疾患は、〔幼虫移行症〕による中枢神経障害を招く病気です。

 病原体となるアライグマ回虫は、北米原産のアライグマの小腸に寄生し他の動物で成虫になることはありません。


 アライグマの小腸で産卵された膨大な数の虫卵は糞便を通じて外界に放出されます。

 虫卵が適度な温度条件を獲得すると11~14日間で、卵の中に感染幼虫が成育し「幼虫包蔵卵」となり、これが病原体となります。

 この回虫のアライグマ体内での寄生には、二つの経路があります。

 一つは幼虫包蔵卵を直接経口摂取することで成虫にまで発育する経路であり、二つ目はこの回虫の幼虫を体内に宿しているネズミなどを捕食することで感染し成虫に発育する経路です。

 ヒトが小動物の体内に存在する幼虫包蔵卵を経口摂取すると、幼虫は成虫になることはなく、幼虫のまま体内各所を移動するようになります。

 これにより〔幼虫移行症〕と呼ばれる激しい症状を呈するようになります。

 アライグマ回虫による〔幼虫移行症〕の症状は、摂取した虫卵の数や幼虫の移行部位に依存します。

 典型的な症状としては、〔神経幼虫移行症〕〔眼幼虫移行症〕があります。

 米国ではアライグマ回虫の感染による重症脳障害患者が何件か報告されていますが、日本での報告例はありません。

 しかし、近年、日本でも飼育されていたアライグマが野生化定着し繁殖しているため、今後発生する可能性はあります。

アライグマ回虫による幼虫移行症の症状
神経幼虫移行症  神経幼虫移行症は、好酸球性髄膜脳炎として発症し、死に至らなかったとしても発育障害や神経系の後遺症を残すことになります。

眼幼虫移行症  眼幼虫移行症では、一側性の網膜炎として発症します。

 アライグマ回虫の幼虫は2mm近くにまで発育することがあり、激しい症状となるため、視力障害が残ったり失明することもあります。


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