この内、最後の「Y.pest」は一類感染症に指定されている〔ペスト〕の病原菌です。
このため、通常〔エルシニア感染症〕といえば、「Y.ent」と「Y.pstb」による感染症を指し下痢などの食中毒症状を主な症状とする病原体です。
これらの菌類はブタや犬、猫、ネズミなどが保菌獣となり、これらの動物の糞便と共に排出された菌が感染源となって、汚染飼料を経口的に摂取した感受性動物が感染し発症して感染環が成立しています。
ヒトに対してもこれらの保菌獣が排出した糞便を直接、あるいは糞便に汚染された食肉や牛乳、水などを摂取して経口感染します。
エルシニア感染症が発症するのは主に小児であり、腹痛や下痢・発熱などの症状を起こします。
Y.entの症状 |
Y.entの感染により発症する〔エルシニア感染症〕では、下痢や腹痛を伴う発熱疾患から敗血症まで多くの症状が発症します。
乳幼児が感染した場合の主な症状は下痢症です。
幼少児では回腸末端炎、虫垂炎、腸間膜リンパ節炎などの症状が多くなります。
高齢者での発症は少ないですが、発症する場合には関節炎などの症状も加わるようになります。
この感染症で発熱はほぼ必発ですが、高熱にはなりません。
この感染症は基本的に〔腸管感染症〕ですが、頭痛や咳、咽頭痛など風様症状が出現することもあり、ときには発疹、紅斑、莓舌などの症状を示すこともあります。
多くの場合、この病気は自然治癒しますが、ときに重症化し〔敗血症〕を起こすこともあります。
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Y.pstbの症状 |
Y.pstbによる〔エルシニア感染症〕も乳幼児期に多く発症します。
この感染症では、発熱は必発であり、軽度の下痢と腹痛、吐き気、嘔吐などの症状が出現します。
更に、発疹や紅斑、咽頭炎などの症状もでます。
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日本国内で食中毒として発症した〔エルシニア感染症〕と〔エルシニア感染症〕は、それぞれ十数例ずつありますが、2000年以降の発症例はありません。
尚、病原菌のエルシニアの三つの種類の正式名は次のようになっています。
Y.ent |
Yersinia enterocolitica
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Y.pstb |
Yersinia pseudotuberculosis
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Y.pest |
Yersinia pestis |
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