原因菌である黄色ブドウ球菌は、コッホが発見しパスツールが培養に成功したとされる病原菌です。
黄色ブドウ球菌は、ヒトをはじめ多くの動物に広く分布し、主に〔化膿性疾患〕から〔敗血症〕など多彩な臨床症状を引き起こします。
多くの〔市中感染症〕や〔新生児室感染症〕〔院内感染症〕、および〔毒素性ショック症候群〕などの起因菌となります。
この菌による食中毒の原因となる食品は、にぎりめし(おにぎり)が最も多く、次いで弁当類、菓子類などとなっています。
黄色ブドウ球菌による食中毒の潜伏期間は、この菌に汚染された飲食物の摂取後1~5時間ほどです。
潜伏期を過ぎると、吐き気や嘔吐を主徴とする〔急性胃腸炎〕の症状で発症します。そして通常は、少し遅れて腹痛や下痢が起こします。
症状が軽いときは吐き気と嘔吐のみで下痢は起こらないことも多いですが、重症化した場合は、激しい吐き気、嘔吐、疝痛性腹痛を伴いながら、水様性の下痢を十数回繰り返し、脱水症状を呈するようになります。
ときには、37~38度Cの微熱を伴い、血圧低下、胸内苦悶、意識混濁、脈拍減少などの症状を起こすこともあります。
一般的に症状は一過性であり、1~3日程度で軽快し予後も良好です。死に至ることは滅多にありませんが、重症時には入院が必要なこともあります。
日本における黄色ブドウ球菌による食中毒の発生件数は、過去には非常に多い時代もありましたが、最近では減少傾向にあります。
過去にはにぎりめしが原因で多発していたのが、最近は衛生管理の徹底により激減したためです。
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