風邪症候群の原因は、80%以上の場合がウイルスですが、ウイルスの数は数百種類以上もあり、風邪をひいて原因ウイルスを特定するのは、インフルエンザの一部を除けば非常に困難です。また、ウイルスの種類によって症状に現れる特徴が若干異なります。
 風邪症候群を引き起こすウイルスや細菌類の主な種類を下表に示します。
    
    
    
    
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       種類 
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       病名・特徴 
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       インフルエンザウイルス 
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 インフルエンザウイルスは、人に感染して伝染病であるインフルエンザを起こすウイルスで、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、C型インフルエンザの3種類があります。
  
 本来は鴨などの水鳥を自然宿主としていたウイルスが、突然変異によってヒトの呼吸器への感染性を獲得したウイルスがインフルエンザウイルスで、この百年間にスペインかぜ、アジアかぜ、香港かぜ、ソ連かぜなどが大流行しました。
  
 ごく最近では、いわゆる「新型インフルエンザ」が大流行しているが、毒性はそれほど強くはありません。
  
 しかし、一部のインフルエンザウイルスは鶏などの家禽類に感染してトリインフルエンザを起こし、人への感染も起こります。これが大流行すれば、極めて毒性が強く人類にとって脅威となります。
  
       
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       パラインフルエンザウイルス 
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 ヒトパラインフルエンザウイルスには血清型の分類で4つの種類があります。1型はよく学級閉鎖を招くタイプでアメリカ西海岸で奇数年に流行します。2型はほぼ毎年秋に流行します。3型は毎年春~初夏に流行します。4型は感染してもほとんどが不顕性感染です。
  
       
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       RSウイルス 
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 RSウイルスは、乳児急性気道感染症(細気管支炎、肺炎など)の主な原因ウイルスです。RSウイルスには血清型でA型とB型とがあります。
  
 RSウイルスは、パラミクソウイルス科に属するRNAウイルスの一種で、パラインフルエンザウイルス、はしかウイルス、おたふくかぜウイルスなどの仲間です。
  
 RSウイルスは、石けん、消毒薬などに出会うと容易に感染力を失います。
  
       
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       アデノウイルス 
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 アデノウイルスは、インフルエンザウイルスに次いで人の体から検出されるウイルスで、高熱のでる咽頭扁桃炎、重症肺炎、脳炎、咽頭結膜炎、感冒性胃腸炎などを引き起こします。
  
 アデノウイルス感染症には季節性はなく、症状には軽い風邪程度から重症な肺炎などまであります。このウイルスには、抗生物質が効きませんが、多くの場合自然治癒することが多いです。
  
       
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       ライノウイルス 
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 ライノウイルスは、鼻かぜウイルスとも呼ばれるウイルスで、大人の風邪の半分近くは、このライノウイルスが原因ともいわれています。ライノウイルスによる風邪は春と秋に多く発症します。
  
 ライノウイルスは、鼻、喉などの上気道の炎症をおこし、頭痛、のどの痛み、鼻詰まり、くしゃみが起こります。最初は、水状の鼻水が出て、次第に黄色や緑色の鼻水となり徐々に回復します。
  
 ライノウイルスに対する特効薬はありません。ライノウイルスの血清型は数百もあり、有効なワクチンをつくることは事実上不可能です。
  
       
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       コクサッキーウイルス 
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 コクサッキーウイルスにはA群とB群とあります。A群は夏期、小児におけるヘルパンギーナ、手足口病、無菌性髄膜炎、全身発疹症、上気道感染などを起こすウイルスです。
  
 B群は、無菌性髄膜炎、夏かぜ、熱性疾患、麻痺や気道性疾患を起こします。B群6型はランゲルハンス島の細胞に障害を与え、糖尿病の原因となります。
  
       
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       エコーウイルス 
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 エコーウイルスは、エンテロウイルスと呼ばれるウイルスグループに属するウイルスです。仲間にポリオウイルス,コクサッキーA・Bウイルスなどがあります。エンテリック・サイトパソジェニック・ヒューマン・オーファン・ウイルスの頭文字をとってエコーウイルス(echoviruses)と命名されました。
  
 エンテロウイルスによる感染症は,夏から秋にかけて多く発生し、無菌性髄膜炎、気道疾患、結膜炎、睾丸炎、心筋炎、心嚢炎、全身発疹性疾患、流行性筋痛症などを引き起こします。感染しても約60%は無症状ですが、重篤な症状を引き起こすことがあります。
  
       
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       コロナウイルス 
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 コロナウイルスは、ヒトを含み様々な動物に感染し、おもに呼吸器系、肝臓、小腸、中枢神経系の疾患の原因となるウイルスです。ウイルスのエンベロープ表面に存在する突起によって太陽のコロナのような外観を持つことからこの名が付いています。
  
 伝染性気管支炎ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、イヌコロナウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、ウマトロウイルスなどがあります。
  
 SARSウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)の病原体である新種のコロナウイルスです。飛沫感染により広がると考えられています。
  
       
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       レオウイルス 
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 レオウイルスは、エコーウイルス群に属するウイルスです。通常、経口感染し、小腸粘膜上皮細胞、粘膜下リンパ組織で増殖します。感染しても、不顕性感染が多いですが、若年者が感染すると風邪様症状、軽い発熱、嘔吐、下痢の症状が現れます。じきに回復します。乳幼児では、乳児嘔吐下痢症(ロタ)の原因となります。
  
       
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       単純ヘルペスウイルス 
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 単純ヘルペスウイルスによる感染症では、皮膚や粘膜に小さな痛みのある水疱が繰り返し発生します。このウイルスは、いったん治まっても休眠状態になって存在し続け、周期的に再活性化し、増殖を始める特性があります。
  
 以前の感染部位と同じ部位に水疱を出現させます。見た目に明らかな水疱がなくても、皮膚や粘膜にウイルスが存在することもあります。
  
 単純ヘルペスウイルスには2つの型があり、1型は唇にできる単純ヘルペス(ヘルペス性口内炎、幼児のアフタ性口内炎)や、眼の角膜にできるびらんの原因となります。2型は陰部ヘルペスの原因となります。
  
 口唇ヘルペスや陰部ヘルペスになるときは、発熱、月経、精神的ストレス、免疫機能の低下などが引き金になっていることがあります。
  
       
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       EBウイルス 
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 EBウイルスは伝染性単核症を引き起こすウイルスです。伝染性単核症の症状は、発熱や喉の痛みがあり、リンパ節の腫れがでます。発熱は、発病から4~8日目が最も高熱となり、以後は徐徐に下がります。発熱が見られないこともあります。
  
 リンパ節は首での腫れが特徴的で、脾臓や肝臓が腫れることもあります。伝染性単核症の症状は、通常、1、2ヶ月で消失しますが、ウイルスの一部はのどや血液中の細胞の中で潜伏・休眠状態となり、ときどき再活性化します。
  
       
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       細菌 
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 さまざまな細菌が存在し、風邪症候群としての急性扁桃炎、気管支炎、肺炎などを引き起こす原因となります。
  
       
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       マイコプラズマ 
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 マイコプラズマはウイルスよりは大きく、細菌よりは小さい病原体で、異型肺炎などの原因となります。これによる肺炎は、マイコプラズマ肺炎とよばれ、異型肺炎です。学校などで 集団発生することもあります。
  
 異型肺炎とよばれる理由は、この肺炎は、レントゲン上での肺炎の影が派手な割りには、全身症状が大したことがないからです。
  
      
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