がん患者には、身体的な痛みだけに限らず、心理的・精神的苦痛、霊的苦痛、そして社会的苦痛など様々な苦痛が伴います。肉体的苦痛と精神的苦痛はそれぞれ関連しあっていて、相互に増幅する性質があります。
実際には完治できるような早期のがんであっても、がん患者は多かれ少なかれこのような苦痛や悩みを抱えて治療を受けています。
また、末期がんであれば、患者は身体的苦痛だけでなく、死の恐怖などの心理的苦痛や霊的苦痛をひしひしと感じて残された日々を過ごさなくてはなりません。
がん患者が遭遇するさまざまな苦痛を癒し、心を安定化させるための療法が「支持療法」ですが、中でも末期がんで死に直面している患者の苦痛を和らげる場合の対応は、しばしば「緩和ケア」と呼ばれています。
患者の抱くそれら多くの苦痛を「全人的苦痛(トータルペイン)」と呼んでいて、それらは身体的苦痛、心理的苦痛、霊的苦痛、そして社会的苦痛などの種類があります。
患者の心を癒す治療者は、患者の全人的苦痛に対して親身になって対応してくれるのです。
身体的苦痛
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どのようながんであっても、最初に現われる症状は、身体的な異常に伴う痛みやその他の苦痛です。
がんの種類や身体での発生部位により異なりますが、がんの存在する身体部位やその周辺での痛みや不快感が現われます。がんに伴う痛みの種類には次のようなものがあります。
・がん病巣の浸潤や転移、閉塞による痛み
・骨転移による痛み
・神経圧迫による痛み
・軟部組織浸潤による痛み
・筋や筋膜の痛み
・筋の攣縮による痛み
がん患者の訴える最も辛い痛みは、がん病巣にに起こる「がん性疼痛(とうつう)」と呼ばれるものです。多くのがん患者は、これを「激しい痛み」や「強い痛み」、「耐え難い痛み」「絶えられない痛み」などと表現します。
身体的影響は、このような痛みだけでなく、がんの進行につれて、食欲減退や急激な身体の痩せ、不眠などの症状へと進み、全身的倦怠感や呼吸困難などのより重大な症状へと変化していきます。
治療面では、がん患者の身体的苦痛を和らげる治療や処置を「身体的ケア」と呼んでいます。
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心理的苦痛
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がん闘病が始まると、肉体的苦痛に加え、精神面での疲労が増していきます。自分は一体、これからどうなるんだろうという不安や死の恐怖が増幅してきて、どうしていいか分からなくなってしまうのです。
治療面では、がん患者の心理的・精神的苦痛を和らげる治療や処置を「精神的ケア」と呼んでいます。
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霊的苦痛
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がんによる霊的苦痛とは、やがて来るかもしれない死に対する恐怖や生きるとは一体何なのかなど自分の存在の意味を捜し求めたり、自信の存在の消滅に対する恐怖などに打ちのめされる苦痛です。
このような霊的な苦痛は、「スピリチュアルペイン」とも呼ばれています。
治療面では、がん患者の霊的苦痛を和らげる治療や処置を「スピリチュアルケア」と呼んでいます。
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社会的苦痛
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がんを患うことで、いままで何事もなく行ってきた、社会生活が営めなくなることで、仕事などから取り残されるのではないかとか、やり残した仕事があるのにそれが出来なくなるなどの悩みが発生します。
また、家族にも迷惑や大きな負担を掛けることになるため、そのことでも悩みます。そして、自分が働けなくなることで経済的にも問題が出てきます。
このような社会生活に及ぼす悩みを社会的苦痛と呼んでいます。また、治療面では、がん患者の社会的悩みを軽減する治療や処置を「日常生活におけるケア」と呼んでいます。
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