肺炎球菌は、健常者の口腔や鼻腔などに定着している弱毒性の常在細菌で、通常は無症状ですが、咽頭炎や扁桃炎などの炎症が発生したときには、炎症部位での菌の増殖が起こり感染症状を呈するようになる菌です。
また、乳幼児の化膿性髄膜炎や小児の中耳炎、肺炎、および高齢者の肺炎などの原因ともなることがあります。
この肺炎球菌がペニシリンに対して耐性を獲得したものが、ペニシリン耐性肺炎球菌ですが、対ペニシリン耐性度によりペニシリン低感受性菌(PASP)とペニシリン耐性菌(PRSP)に区別されます。
PRSPは、ペニシリン耐性を獲得しているものの、病原性や増殖能力など生物学的特徴はペニシリン感受性の肺炎球菌と特に違いはありません。
この菌は、感染患者からの飛沫により経気道感染を起こします。更に上気道より感染すると、血流に乗って移動し他臓器へも感染します。
ペニシリン耐性肺炎球菌感染症では、通常の肺炎と同様な症状を呈するほか、副鼻腔炎や心内膜炎、心嚢炎、腹膜炎、関節炎、まれには尿路生殖器感染から菌血症を引き起こすこともあります。また、感染防御能力の弱い0~6歳児や60歳以上の高齢者では、しばしば、敗血症や髄膜炎を合併することがあります。
ペニシリン耐性肺炎球菌感染症の治療には、新ペネム系、新セフェム系、カルバペネム系、ニューキノロン系などの抗菌薬が用いられます。近年、ペニシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリンに同時に耐性を獲得した、多剤耐性肺炎球菌も次々と現れ、治療面での脅威となっています。
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